第193話 先輩の相談事 1 ページ21
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広場の時計台の下で本を読み、待ち合わせまでの時間を潰す。といっても、待ち合わせ時刻10分前に着いたから、そんなに読み進められないだろう。
ぺらぺらとページをめくっていたら、案の定すぐに「ごめん。おまたせ。」と声が聞こえた。顔を上げると、一之瀬が笑ってこちらに駆け寄ってきている。
「いえ、そんな。お呼び出ししたのはわたしですし…。わざわざ時間を使ってくださってありがとうございます。」
「そんな堅いこと言わないでよ。とりあえず行こうか。」
千鳥ははい、と頷き一之瀬と一緒に近くのカフェを目指した。
カフェに到着すると、千鳥はいつものようにミルクティーを、一之瀬はカフェオレを頼んだ。それからぽつぽつと会話が始まる。
「一之瀬先輩、今までの旅、ありがとうございました。」
「うん、こちらこそ。千鳥のおかげでよっぽど強くなれたよ。」
千鳥は手を膝に乗せ、軽く頭を下げる。一之瀬は爽やかに笑って返した。
しばしの沈黙が流れる。
千鳥は冷や汗を流した。──どうしよう、話題に困ってしまった。きちんと顔を見てお礼を言いたかっただけだから、本当はわざわざカフェなどに入らなくても良かったのだが。
「…ねえ、実はオレ、千鳥に話したいことがあったんだ。」
「えっ？は、はい。」
一之瀬はにっこり笑ってそう言った。千鳥としては話題に困ってたので願ったり叶ったりなのだが、一之瀬の笑顔にはどこか影があるように見えた。
「相談をしたいんだ。」
「相談…ですか？」
「うん、恋愛相談。」
千鳥は一之瀬の言葉にぎょっと目を丸くする。反射的に顔が赤くなってしまった。
(そっか、一ノ瀬先輩好きな人いるんだ。)
いや、一之瀬自身の話とは限らないだろう。でも、それにしても。
「あ、あの。わたし恋愛経験とかそんな無いですし、助けになれるかどうか…。」
「いいんだ。千鳥に聞いてほしい。」
一之瀬があんまりまっすぐこちらを見るので、千鳥は一つ深呼吸をして「わかりました。」と頷いた。恋愛相談を受けることなど初めてだから、緊張する。
「オレ、好きな子がいるんだけど。」
その言葉にまたゴクリと唾を飲む。やはり一之瀬自身の話だったのか。
(…まてよ、一之瀬先輩に好きな人がいるってことはリカ先輩は…。)
千鳥は一瞬脳裏にリカのことが浮かび、ドキンと心臓が嫌な音を立てるが、小さく首を振ってその考えを振り払った。今話しているのは一之瀬なのだ。彼の気持ちに寄り添えるようにしなければ。
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いわき(プロフ) - 檸檬けーき。さん» 檸檬けーき。さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです！この小説はもう完結していますが、同じ主人公が出てくるアレス版の新作を書き始めましたので、良ければそちらもご覧ください(＊^^＊) (2019年10月18日 10時) (
レス) id: b59bbba1ca (このIDを非表示/違反報告)
檸檬けーき。(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます (2019年10月18日 5時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月8日 0時
