第192話 頼り甲斐のある 3 ページ20
＊
「楽しい旅でしたね。…でも、大変な旅だった。」
「そうだな。…お前はよく頑張ったよ。」
突然、綱海はわしゃわしゃっと千鳥の頭を撫でた。千鳥はびっくりして「わっ！？」と声を上げてしまうも、不思議と嫌な気持ちではなかった。それどころか、どこか安心する。
…頑張った。そう言ってもらえると、自分を見てくれる人がいるんだと、もう1人ではないのだと感じて、胸がじんわり温かくなった。
千鳥は嬉しくなって、綱海の手を頭に乗せたまま、綱海を見上げて微笑んだ。
「…千鳥、お前…。」
「え？」
すると、綱海は何故か目を見開いて千鳥から2〜3歩距離を置いた。千鳥が「どうかしましたか？」と尋ねると、慌てたように「な、なんでもねえよ。」と返し、そっぽを向いてしまった。
千鳥は不思議に思いながらも、綱海と同じ方向を向く。空はオレンジ色になり始めていた。
夕焼けに染まる鉄塔広場は想像通りとても綺麗だった。
・
(何だったんだ？今の…。)
鉄塔広場で街を見下ろしながら、綱海は先ほどの一瞬の心臓の動きに戸惑いを感じていた。
千鳥のことは、仲間を良く見て頑張ってる、とても良い奴だと思ってた。でもさっきの感覚は、自分の腕の中で微笑む彼女を見たときの感覚は、それだけじゃなくて──。
(くーっ、駄目だ、わかんねえ！)
綱海は自分の気持ちに整理がつかないまま、頭を掻きむしって考えることをやめた。
隣で少女が不思議そうな顔でこちらを見ている。その顔を見ていると、さっきのよくわからない気持ちがまた溢れてきそうだから、綱海は少女から視線を外して街の夕暮れを眺めた。
自分の悩みはこういう景色を見ると、すっ飛んで行ってしまうものだ。けれど、今回は。
この気持ちは消えることなく、心の中にいつまでも残っていた。
＊
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いわき(プロフ) - 檸檬けーき。さん» 檸檬けーき。さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです！この小説はもう完結していますが、同じ主人公が出てくるアレス版の新作を書き始めましたので、良ければそちらもご覧ください(＊^^＊) (2019年10月18日 10時) (
レス) id: b59bbba1ca (このIDを非表示/違反報告)
檸檬けーき。(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます (2019年10月18日 5時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月8日 0時
