第185話 エイリア石のくれたもの 2 ページ2
＊
「…なあ千鳥。その話は……。」
風丸は苦笑いを浮かべながら千鳥の話を制止しようとした。けれど千鳥はゆっくり首を横に振って、しっかりと皆を見据える。
「無かったことにしちゃいけないと思うんです。そして、ただの黒歴史というだけの事実にしてしまうのも、違うと思うんです。」
「…あんたに、何がわかるんだよ！」
宍戸が千鳥を怒鳴りつける。隣にいた少林寺が慌てて「し、宍戸！」と彼を宥めた。
「わたしも、過去にエイリア石によって自らの身体を強化しました。」
千鳥の言葉にみんなはハッと息を飲み、千鳥に視線を向けた。自らがに視線が集まっている状況に狼狽えてしまいそうだけど、千鳥は小さく深呼吸をして言葉を続けた。
「大切な人とサッカーをしたい。その望みのためにエイリア石に手を出し、その結果……。」
千鳥は立てかけた松葉杖を指差した。みんなはゴクリと唾を飲む。染岡が「まさか、あのとき車椅子だったのは…。」と零したので、千鳥は黙って頷いた。
場に静寂が訪れる。宍戸も何を言ったらいいかわからないようで、視線をあちらこちらに動かしていた。
「…でも、わたしはこのことを悪いことばかりだとは思ってません！」
千鳥はそう言ってぱっと笑った。
「もちろん、エイリア石を手に取ってしまったことは後悔しています。それで迷惑をかけてしまった沢山の人にも申し訳ないと…。
でも、それがきっかけでわたしは色んなことを学びました。仲間の存在に気付けました。沢山のものを得ました。」
千鳥は笑顔のまま、戸惑う皆の顔をぐるり見渡した。
「きっと皆さんもそうだと思います。
エイリア石に適応するために辛い特訓をしたのでしょう。その結果、エイリア石を抜きにしても皆さんはとっても強くなりました。
それに、皆さんはサッカーを楽しむことを誰よりも知ったと思います。それは、きっと大切なこと。そして、エイリア石に手を出してしまったから、得ることができたものでしょう。」
ぽかんとする彼らの顔を一人ずつ見回して、真剣な顔で千鳥は最後の言葉を紡いだ。
「エイリア石を手に取った自分自身を、否定しないであげてください。」
そう言って、最後にもう一度笑った。
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いわき(プロフ) - 檸檬けーき。さん» 檸檬けーき。さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです！この小説はもう完結していますが、同じ主人公が出てくるアレス版の新作を書き始めましたので、良ければそちらもご覧ください(＊^^＊) (2019年10月18日 10時) (
レス) id: b59bbba1ca (このIDを非表示/違反報告)
檸檬けーき。(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます (2019年10月18日 5時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月8日 0時
