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お酒も進んで４、５杯飲んだころ志麻さんのスマホが着信を知らせる。
ポケットから出し、ちらりと見て面倒くさそうにあー…と言いながらごめんちょっと、と席を立って外に出ていった志麻さんを見送った。
「マスター、準備お願いします。」
「かしこまりました。」
志麻さんの誕生日が明日ということで、事前にバーのマスターに許可を取ってケーキを持ち込ませていただいた。
他のお客さんは思ってたより数が少なくてありがたい。流石に大人数の場所でするのはちょっと申し訳ない。お客さんにも志麻さんにも。
「あ、それとヨーグリートオレンジをお願いします。」
「かしこまりました。」
調べてたら出てきた誕生日酒。１２月１日はヨーグリートオレンジという甘そうなお酒らしい。甘いもの志麻さん好きだって言ってたし丁度いいかなって。
ちなみに志麻さんにかかってきた電話は同じ部署の先輩で志麻さんの同期の人に協力してもらった。快く承諾してもらえて助かった。仕事終わってから仕事場からの電話って出たくないから志麻さんにはちょっと申し訳ないけど。
お酒も用意してもらって持ってきたケーキはマスターの手によっておしゃれにされてお皿の上。数本だけ可愛い模様のキャンドルを刺した。火は戻ってきてからでいいかな。溶けちゃうし。
ドアベルが鳴ってごめんな、と戻ってきた志麻さんの目がカウンターの上のケーキを見て止まったまま動かない。
「お誕生日、おめでとうございます。１日早いんですけど…。」
「…ありがとう。俺の誕生日知っとったんや。」
「あ、他の方から聞きまして…。」
誕生日を教えてくれたのも電話の協力をしてくれた先輩。今度何か差し入れしよう。甘いもの好きだったっけ…。
「この酒は？」
「誕生日酒って言って誕生日花とかみたいにお酒も１日ごとにあるみたいで。これは１２月１日の誕生日酒でヨーグリートオレンジってお酒です。」
「そんなんあるんや。」
知らんかった、とグラスを手に一口。私も呑んだことは無いからどんな味なのかは知らなくてじっと志麻さんの喉が動くのを見ていた。
「…見すぎやろ。」
「あ、すみません…。味、どうです？」
「せやなぁ、甘くておいしい。」
ありがとうな、と笑った顔が今までで一番優しい顔をしていて。そんな顔を向けられると勘違いしてしまいそうです。
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