＊ ページ4
「・・・馬鹿じゃないの！？ピアスで直接耳朶に穴をあけるなんて・・・！消毒液だって、冷やすものだって何にもないのに！」
「・・・・Aのくれたピアス、俺ちゃんと似合っとる？Aの口から聞かせてや。な？お願い。」
「・・・似合ってるよ。悔しいくらい。」
「・・・ほんなら、ええわ。」
苦痛の表情が和らいでいくその姿に、私は一滴の涙を落とした。言ってやりたい言葉は沢山あった。なんなら強い口調で叱責したって、こんな愚行をした彼が相手ならば私が後に誰かから責められることもないだろう。けれど、志麻が余りにも幸せそうに微笑むものだから、私は何も口に出すことができなかった。
「・・・俺、ずっとAといたから分かるよ。卒業したら、二度と俺の前に現れんつもりやろ。」
「・・・。」
「そこは否定せえや。・・・Aがなんでそんなこと言いはるんかまでは分からんけど、俺は嫌やよ。卒業したらもうAに会われへんのなんて絶対嫌や。やから考え直して？」
全部、貴方の為なのに。どうしてそんな私の決意を揺さぶるようなことを言うのですか。
「志麻の、ばか。」
こんな言葉一つで揺らいでしまう決意に、意味はあるのでしょうか。私は本当に心の底から彼の幸せを願えているのでしょうか。
彼の隣で彼の寵愛を一身に受けるその女性に嫉妬しないと言い切れるのか。
知らない誰かのものになる彼を、本当に笑顔で見届けることができるのだろうか。
彼への恋心を、数十年間育て続けたこの果実を、完全に捨て去ってしまう事が、本当にできるのだろうか。
「・・・好き。志麻のことが、ずっと前から好きだったの。だからね、私もう幼馴染じゃいられない。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
