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「…美味しい。」
「せやろ？」
恐る恐る飲んでみたウイスキーは、ほんのりとした甘みがあって。
今までのとは格別に飲みやすかった。
対する志麻君はロックで飲んで、満足そうに笑っている。
「これなら飲めそう。」
「いいウイスキーは苦いだけやないんよ…ほら、どんどん飲みや。」
そう、どんどん注いでこようとする志麻君を適当にかわして。
そろそろいいかな、とおもむろにキッチンへと向かう。
Aー？なんて呼ばれているが、ちょっと待っててと返して
冷凍庫の中からとあるものを探していく。
「あ、あったあった。」
某有名アイス屋さんのアイスケーキ。
これを選んだ理由は…まぁ、志麻君に渡せば気づいてくれるかな。
そう思いながら、蝋燭も持って彼の元に戻る。
「どないした？やっぱ酔ったか？……31？」
「そ。今年の志麻君の誕生日ケーキ。」
「……年齢と同じ名前のもんにせんでえぇわ。坂田が言ってたのこれか！」
「おぉー…流石志麻君。」
見た瞬間にツッコミを入れてくれる志麻君。
そう、今年で31歳になる志麻君に用意したのは31のアイスケーキ。
ちょっと困った笑みを浮かべながら全く…と言っているけどまぁ、成功だろう。
「ちょい待ち、Aの分は？」
「え、私まだ31じゃないし、28だし。」
「あほ。全く……用意して正解やったわ。」
「へ？」
お前も誕生日やろ。なんて言って私の頭に手をポンと乗せた志麻君は
そのままキッチンに向かっていった。…冷蔵庫にそれらしきものなかったはずなんだけど。
戻ってきた志麻君の手に乗っていたのは、小さな白い箱。
「缶詰、大量に送っといてよかったわ…」
「え、その陰に隠してたの？」
「おん。」
その箱の中から出てきたのは小さなチョコケーキで。
予想外の事に、酔いも重なった私の涙腺はすぐに緩んでいって。
志麻君が蝋燭片手に固まっていた。
「え、え。何で泣いとるん！？」
「うれし泣き……」
「あーもう、可愛いこと言ってくれるやんか。ほら、泣きやみ？」
一緒にローソク消そな。と言いながら自分のと私のと、ローソクを刺して火をつけてくれる。
互いに歌った歌は、志麻君がスキルフル活用でハモってくるから思わず笑ってしまった。
「「ハッピーバースデートゥーユー…」」
一緒にローソクを消して、笑い合う。
あぁ、どうか願わくば来年も一緒に火を消せますように。
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