December 1【sm/コラボ】 (ページ2)

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それは、ずっと前から決めていた事だった。高校卒業と同時に、彼とは距離的にも関係的にも距離をおこうって。

「・・・なんでなん？卒業するから？・・・関係ないやろ、そんなん。」

　私の発言で機嫌を損ねたらしい彼は、眉間に皺を寄せ、くしゃりとピアスが入っていた包みを握りつぶした。

「関係あるよ。志麻は就職するって言ってたけど、私、進学するし。そうなったら時間とかお金の使い方だって違うだろうし、今みたいにはいかなくなると思う。」
「なんやねん、それ。そりゃあ今ほどの頻度で会えんくなるのは分かっとるけど、でもそれがなんなん？お互いの誕生日祝うくらいできるやろ。おめでとうの一言すら言わせへんつもりか、お前。」
「もう子供じゃないんだし、そういうのいいかなって思って。」

　志麻と喧嘩したことがない訳ではなかったが、ここまで冷たい瞳を向けられたのは初めてだった。それでも、不思議と怖くも悲しくもなかった。私が知っている志麻は、もっと心の深いところにいるから。目を閉じずとも、再び西日に照らされた貴方を思い起こせるから。
私は誰よりも優しくて、ちょっと不器用で、温かくて、実は涙もろくて、努力家な彼を知っている。私はきっと、誰よりも志麻に近い存在だった。だから、私じゃ駄目だと思った。私では彼を不幸にしてしまう。

　志麻なら許してしまうと分かっていて、甘えてしまう。
　志麻なら怒らないと、我儘になってしまう。
　志麻ならやってくれると、大きすぎる期待を押し付けてしまう。

　それだけは嫌だ。私はどうしても、志麻には幸せになって欲しい。

　だから、私はこの想いを、数十年間の熟しきった初恋の実を捥ぎ取ってしまおうと決めた。私のたった一つの願いをラピスラズリに託して、私は彼との今までを全て過去のものにすると決めたのだ。

だから、だから

「私、卒業したら志麻の幼馴染やめるね。」

　心地よかったこの場所を他の誰かに、貴方が見初めた誰かに譲りたいのです。