この男、危険につき。 (ページ6)

今日:58 hit、昨日:47 hit、合計:13,407 hit

5 ページ6

｢あっぶなかったぁぁ〜〜〜｣

体内に残っている酸素を全て使うほどの声を放出し、新鮮な空気を肺いっぱいに取り込んだ。良かった、生きて帰れる。そう安心したのも束の間、後ろから―ガラガラと音が聞こえた。

｢めちゃくちゃでかい独り言だね｣

……冷や汗が止まらない。なんで、どうして。

｢さよならは酷いよ〜、もう会わないつもり？｣

当たり前でしょう、そう言いたいのに言葉にできない。数秒前に吸い込んだ酸素も仕事を成してくれない。

｢あの場にいるみんながみんな、恋人を欲しがってるとは限らないよ｣

確かに。私もそうだからこの人の言い分は間違っていない。だけど違うのだ。

この人と私の''恋人なんていらない''のニュアンスが。

｢ねぇ、僕の''ともだち''になってよ。｣

暗闇の中で店から漏れる光に照らされて、あの笑顔が浮かび上がるのが見えた。

あぁ、この笑顔は私をどうも惑わせる。