22 ページ23
歩いて15分ぐらいでアパートに隣接しているこじんまりとしたカフェに着いた。
「ここだよ」
「かわいいお店ですね」
「でしょ？落ち着くし、店主も優しくていい所だよ」
彼のような優しい笑顔と優しい雰囲気を纏った人にピッタリのお店だな、と思った。
ドアを開けるとカランカランと音が鳴り響き、奥から店主と思われる男性が顔を出した。
『お。ジェノじゃないか、いらっしゃい』
「おじさん、久しぶり」
『最近来なかったじゃないか』
「ん、ちょっと大学が忙しくて」
2人で中睦まじく会話しているのを黙って見ている私は少しばかりかその雰囲気に浮いている感じがする。
「どこでも座っていい？」
『おー、いいぞ、ゆっくりしていきな』
「そうするね」
そういって店主はまた奥に戻っていった。それを見届けた彼が振り向いた。あの笑顔を添えて。
「ごめんね、どこでも座っていいって」
「だね、どこ座る？」
「んー、じゃあ、あそこにしよ」
そういって優しく私の腕を取り、彼が目的地にしている席に連れていかれる。
「ふふ、ここ、いい席でしょ」
「うん、そうだね」
「僕のお気に入りの席なんだよね」
「そっか、」
目的地に着いたら離れた温かさに、少し寂しくなる。駄目だ、だめだ。これ以上彼に気を許してしまうと危険だ、私の中の危険信号が点滅する。
「何食べる？あ、まず最初は飲み物か」
「んー、じゃあアイスカフェラテで」
「了解、そしたら何食べる？」
「んー、たくさんあるね」
「おすすめはオムライス！まじでうまいの」
「そうなんだ、じゃあそれにする」
「ふふ、じゃあ注文してくるね」
と、席を立ちカウンターへと向かう彼。このお店はオーダーするときに店主に直接言うスタイルらしい。変わったお店だ。私が知らないだけで他にもそう言うお店は沢山あるのだろうか。そう考えているうちに私の目の前に戻ってきた彼。
「また考え事してた？」
「え、いやしてないよ」
「嘘つき、僕のことだけ考えてって言った」
「ふはは、ごめんね」
なんか、初対面の時と立場が逆になった気がする。こんなにもよく拗ねる人だとは思わなかった、むしろ怖いとさえ思っていたし。少し彼に対する印象が変わった。それはもういい方向へと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：shima | 作成日時：2024年2月16日 13時
