この男、危険につき。 (ページ21)

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「今終わったよ。図書館前で待ってるね」

と連絡が入った。初めての連絡がこの一文だなんで誰が想像する？
既読だけつけて、私も図書館へと足を動かす。約束をすっぽかして帰ろうとも思ったが、あの借金取りのような日常が再度始まりそうになる気がして辞めた。

「あ、いる……」

壁を背もたれにして携帯を触ってるだけで絵になるような人にお待たせ、だなんて声をかけるには勇気がいる。そう思っていたらあちらからふいに視線が向いた。

「あ！こっち！！」

さっきまで触っていた携帯を用済みの如くポケットに突っ込んだ彼。可哀想に。携帯もあんな天使に沢山顔を見られて嬉しかったはずなのにね。なんて、変なことを考えていたら彼が小走りで私の前まで来てくれた。

「帰ったかと思った」

「帰っても良かったんですか？」

「ううん、だめ」

だめ、と目を細めて笑う彼に鼓動が早くなる。

あぁ、もう手遅れだなんて話ではないかもしれない。

初対面では、あんなに怖いだなんて恐怖を抱いていた私のくせに、借金取りのような生活をしたのに、名前も知らない女の子から見ず知らずの侮辱のようなものを受けたのに。全部の災いの元凶は今目の前にいるこの人なのに。私って結構、馬鹿なんだな。

盲目。

女の子が好きな人の前では盲目になる現象、ドラマや小説、漫画で見てきたけれどイマイチ分からなかった。でも、きっとあの主人公の女の子は皆、こんな気持ちなのかな。