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「連絡、できなくてごめんね？」
「べ、べつに大丈夫です」
「ほんと？迷惑とか言いながら待ってたりとかしてない？」
「だから、してないですって」
「そっか〜、じゃあまた連絡先教えてよ」
「嫌です」
「なんで？僕の携帯番号消した？」
「け、消してないです」
「ふはは！素直すぎて可愛いね」
かわいい、なんて言われ慣れていない私には免疫が備わっておらず返答の仕方がわからない。
「Aちゃんは僕の携帯番号持ってて、僕はAちゃんの番号を持っていない、あまりにも不公平じゃない？それは交換とは言わないよね？」
「じゃあ私が連絡先消しちゃえば……」
「消しちゃうの？」
どうしてこの人は、そんなに私を困らせるんだろう。私が消すと宣言すればこの人が傷ついちゃうのではないかと考えてしまう私は、ついこの前まで隣にいるこの人のせいで生きた心地がしなかった生活を忘れてしまったのだろうか。
「消さないでよ、ね？」
そう言い、あの日と同じように私の右手の人差し指に絡む骨ばった手。振りほどこうと思うのになぜ振り解けないんだ。力を入れたらすぐ離れるほどの弱さなのになんで、どうして。
「消しません」
無意識のうちの放出。
はて、これは本当に無意識なのか。わからない。
自分で自分が何を考えているのかわからない。
だが、ただ1つだけ分かっていることがある。
この人は私を無意識かもしれない領域にまで彷徨わせ、逃がさない。まるで捕らえた獲物は逃がさないハイエナのように。それだけだ。
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作者名：shima | 作成日時：2024年2月16日 13時
