この男、危険につき。 (ページ12)

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｢そういえば、Aも話あるんでしょ？なに？｣

そうだった、今日ここに集まった目的を忘れるところだった。

｢あのね、合コンの時に私の向かいに座ってた人のせいで最近調子が悪いの｣

と切り出し、あの日にあったことを全て洗いざらい話した。

｢イジェノくんだっけ？あの子、Aが店出た瞬間に抜け出してたから、もしかしたら？とは思ってたけどそんなことがあったなんてね｣

｢そうなの｣

｢でも、なんにもなかったんでしょ？｣

｢そうだけど…｣

｢なら大丈夫だよ、もう忘れたんじゃない？あの顔ならA以外の遊び相手たくさんいるっしょ｣

｢なんか、それもそれで複雑なんだけど｣

｢ごめんごめん、Aが駄目って言ってる訳じゃないよ？｣

｢わかってる。でも！元はと言えばあんな合コンに無理やり参加させた、あんたのせいだからね！｣

｢それはごめんって、ほら、落ち着いて枝豆でも食いな、今日はあたしが奢るから｣

｢そうこなくっちゃ｣

彼女に全部話して文句も言えて、幾分か楽になった気がする。

彼女が言うように、ほかの女にでもあの特有の笑顔で愛想を振りまいているんだろう。あの笑顔は猛毒だ。あの笑顔を見ると身体中に毒がまわり痺れていく。

私もその毒されたひとり。

きっともう連絡は来ない。
あの笑顔も優しい声も骨ばった人差し指も全て忘れてしまおう。うん、忘れてしまえ。

体内に残っている毒を消すかのように温くなった麦茶を勢いよく流し込んだ。