この男、危険につき。 (ページ2)

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大学1年生の夏。｢大学生になったんだし、たくさん遊ぼ♡｣と友達に無理やり連れ出された合コンで件のメッセージの張本人、イジェノに出会った。

合コンの参加人数は私を含め女子4人と男子4人。男子の顔ぶれは、合コンなんて絶対に必要ないでしょと言えるぐらいの美男子揃いだった。私を除く女子達はまるで捉えた獲物は逃さないハイエナのように、美男子たちに目を光らせている。恐ろしや。

｢つまんない？｣

ふと、前方から声が聞こえ顔を向けると、これまた美男子がこちらを向いて人の良さそうな笑みを浮かべている。そういえば名前なんだっけ……と数分前の記憶を遡るが思い出せない。

｢もしかして名前忘れた？｣と先程と変わらない笑顔で問いかけられた。そうだ、この笑顔。自己紹介のとき、三日月のような目をした笑顔が印象に残っている。だがその笑顔が強烈に印象に残りすぎたせいか、それ以外の情報を上書きすることを忘れていたんだろう。

｢ごめんなさい……｣と素直に謝った。｢謝らないでよ、1発で名前覚えられる人なんてこの世にいないよ｣｢そんなことないと思うけど｣｢確かにそれはいえてるかも。僕は覚えてるし。Aちゃんだよね。｣

…………手馴れている。短い会話のキャッチボールにも関わらず、そう確信を持てた。相当な場数を踏んできているのだろう。｢じゃあ忘れちゃったAちゃんの為にもう1回言うね。俺、イジェノ。漢字はねぇ〜王を意味する＜帝＞に努力するの＜努＞｣と、指で空中を斬りながら教えてくれた。別に聞いてもいないのに。｢おじいちゃんがつけてくれたんだ｣これまた興味もないことを教えてくれる。

でも今でもはっきり覚えているということは、きっとこの時からジェノの策略に嵌っていたのかもしれない。