深海シティアンダーグラウンド :黛 ページ6
*つづき*
騒がれると迷惑だ。
仕方がない、止めよう。
『…やめな。
上の奴って言っても地下に来るような奴だ、ろくなもん持ってねえだろ。』
ホームレス達は、少し狼狽えて帰っていく。
『…アンタ大丈夫?
上の奴だろ、なんでこんなとこ来てんだよ。』
そいつを見ながら話す。
背の高く、薄い灰色の髪をしていた。
髪と同じ色をした目がこちらを向く。
「…別に。
街より、こっちのほうが俺に合うんだ。」
「合う」か。
わざわざ地下を好むなんて、珍しい奴もいる。
…街、か。
『へえ、物好きだなアンタ。
……あのさ、帰るときでいいから私を上に連れてってくれない?』
「…は?
なるほど、俺が“ろくなもん持ってない奴”だからそれで恩返ししろってか。」
『違うけど?』
何いってんの、と聞くと、彼は少し黙った。
意味がわからないままでいると、
「まあ、いいぞ」
ぼそりと呟いた。
**
水面は赤かった。
彼が言うには、以前は青かったらしい。
『…明るいんだな』
私の呟きに、同じように彼も呟いた。
「…だから俺には合わないんだ」
それきり喋ろうとしない。
空気を変えようと、私は質問をした。
『アンタ、名前は?』
「……黛。」
『んじゃ、マユズミ、今日はありがとうな。』
別に、と言うけれど、
ここについて色々と教えてくれた。
ここは王政なんだそうだ。
最近、その姫様が精神病だと話題らしい。
それから、電車を見た。
水を切って進むそれは、とても綺麗だった。
……でも。
『…ここは、私あんまり好きじゃねぇな。
地下は異形の動物とか、気持ち悪い病気とかあるけど、好きだ。』
「…俺もだ。
ここの奴等はだいたいおかしいんだよ、
地下は人間らしくて、居心地がいいんだ。」
目の前を、着飾った女たちが横切る。
中身の知れないほど、着飾った女たちが。
冷たかった。
この空気が、この街が。
でも、こいつは。
『…もう少し、居ていいか?』
「は?
お前、嫌いなんだろ?ここが。」
でも。
『この街は嫌いだけど、
…マユズミは好きだ。』
黛が顔を伏せた。
私は、恋心、なんざ知ったものではない。
これは、恋、なんかの類とは違うのかもしれないが、
黛の伏せた横顔が、水面と同じように、
少し赤く染まっていたことが、ちょっと嬉しかった。
*終わり*
10人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クラゲ(プロフ) - one direction のhappily をお願いしてもいいですか? (2016年5月17日 17時) (レス) id: 2674bc1ed0 (このIDを非表示/違反報告)
あや - えっと...黒子君でなりすましゲンガーお願いします! (2015年8月31日 1時) (レス) id: 62745ee85a (このIDを非表示/違反報告)
さくらざき(プロフ) - 秋音さん» コメントありがとうございます! (2015年8月30日 17時) (レス) id: 8414037635 (このIDを非表示/違反報告)
秋音(プロフ) - 個人的にクレヨンが好きです。更新頑張って下さい! (2015年8月30日 17時) (携帯から) (レス) id: c9e4cf7e25 (このIDを非表示/違反報告)
Hino Sekai - ありがとうございました!マイナー(?)な曲ですいませんでした! (2015年8月28日 22時) (レス) id: 107f46a531 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくらざき | 作成日時:2015年6月28日 10時