生き急ぎ死に急ぐ彼女達【文スト】 (ページ3)

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羊の王と曼珠沙華1 ページ3

＜中也目線＞

　｢中也、新入りだ｣

　白瀬にそう告げられて目を向けた先にはと十歳前後に見える同じ顔立ちの幼い少女がふたり。

　上手く使えば相当な武器になるだろう、愛くるしく可愛らしい顔立ちに触れることを躊躇う陶器のような色白の肌とみずみずしい果実のような唇。
目を引く漆黒の髪は髪に差した紅い曼珠沙華の花飾りがよく映える。

　何より印象的なのは黒真珠のような引き込まれる黒い瞳だ。

　宝石のようでありながら、深い深い穴を覗いているかのようなどこか危うげな闇をはらんでいる。

　｢はじめまして、篠崎沙弥っていうの。こっちは双子の妹の歌弥｣

　｢………よろしく｣

　にこやかな笑みを浮かべる沙弥とあまり表情の読めない、いっそ無表情と言ってしまった方がしっくりくる歌弥。

　見分けがつかぬ程の瓜二つだが、こうも印象が違うとは。

　おう、とだけ答えると白瀬は少々興奮気味に告げた。

　｢このふたり、異能力者だ!これで『羊』はもう人拐いや人買いに怯える必要はなくなるぞ!｣

　その言葉に軽く聞いた話が脳裏をかする。
双子で異能力者、曼珠沙華と云えばほぼ間違いないだろう。

　｢そうか、手前らが『曼珠沙華』か｣

　俺の言葉に双子は肯定も否定もせず、ただただ微笑んでいた。