99馬鹿 帰る手がかり ページ49
「Aちゃん」
「……もう驚かねぇぞ。この野郎」
「酷いね〜」
いつものように庭掃除をしていると傍の木から低い男の声がする。
その声には聞き覚えがあるので私は驚くことは無かった。
ジトーッと声がする木の方へ目をやるとその木からシュタッと華麗に降り姿を現したのはタソガレドキ忍者隊忍び組頭の雑渡昆奈門である。
「来るならちゃんと正門から来やがれ」
「プロの忍者が律儀に正門から来ると思うかい?」
「……確かにな。で何のようだ?」
「君が私に頼んだことについて話しに来たんだよ」
私は箒を動かしていた手を止めて雑渡の方に視線をやる。私は以前彼にあることを頼んでいた。
それは……"今まで始末した天女の遺体を埋めた場所を掘りおこし遺体があるかどうか"である。
私は彼に話を促すと雑渡は少しずつ話し始めた。
「部下に命じて今までの天女を埋めた場所を掘り返したよ……その穴の中には"誰もいなかった"」
「!……そうか」
"誰もいない"それは遺体が消えたという事だ。
勿論熊とか狼などの野生動物が掘りおこしたのなら話は別だが、雑渡の話では何者かが掘りおこした形跡はなかったようだ。
これで可能性があることが分かった。
「……嬉しそうだね」
「ん?あぁそうだな。ようやく元の世界に帰れる手がかりが分かったんだ。嬉しいに決まっているだろう?」
「ふ〜ん」
そういい雑渡はどことなく不機嫌なオーラを漂わせる。
私は何か変なことを言っただろうか?
何故不機嫌なのか理由を聞こうと思い話しかけようとしたその時
「なぁ、ざっと……!?」
「……」
雑渡は懐から素早く苦無を取り出し私を壁に追いやると同時にその苦無を私の首へと押し付けた。
以前も少しドキドキしたが今は別の意味で心臓がドクドクと脈打っている。
私はいきなりの出来事に頭がついていかず雑渡の顔をジッと見つめる事しか出来なかった。
「……"タヒ"というのが関わっているのなら今ここで君を殺れば、君は元の世界とやらに帰れるんだよね?じゃあ今私が君を殺っても問題無いわけだ」
「はぁ!?いやいや!いくら何でもまだ心の準備とかまだだし!!」
私は必死にそういうが雑渡は私の首に当てている苦無の力を緩めることはない。
確かに元の世界には帰りたいがいくらなんでも展開が急すぎる!人には人のタイミングってものがあるだろう!
私はどうにかしてこいつを止めようと考えていると雑渡は何かに気付いたようにその場を離れた。そしてその瞬間何かが飛んできた。
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2016年1月30日 13時