８７馬鹿 受験生に"落ちる"という言葉は禁句である ページ37
「……どうしてこうなった」
私は今日自分が取った行動を思い返す。
私はいつものように起きて顔を井戸水で洗い食堂で朝餉の手伝いをして朝食をとり事務室へ行って掃除を言いつけられて掃除をしようと外を歩いているといきなり地面の底が抜けたのだ。
まるで私がこの世界にくるときに落ちたマンホールのようだった。
落ちた穴は結構な深さがあり自力では上がれない。掃除道具は落ちる際に放り投げてしまってここにはない。それが悔やまれてしょうがない。箒でもあればなんとか登れるのに……。
私はハァと大きなため息をついてどうしようか考えた。
ここに秀作でも通れば助けてもらえるんだけどな〜。
「おーい!誰かいないのー!」
私は穴の中から大きな声で叫んだが何も反応が無い。
今は皆授業中か……。やっぱり誰か来るのをこの穴の中で待つしかないのか
私は再び大きなため息をついた。
「しかし……落とし穴とか何年振りだろ」
落とし穴なんて小学生の時に兄貴を落とした時に作った以来か?
まぁ、その後兄貴の仕返しで私も落とし穴に落とされたのだが、その後に生き埋めにされそうになったのを今でも覚えている。
あん時の落とし穴に比べてこの落とし穴は結構居心地がいい。
周りの土は固く固められているためちょっとの刺激じゃ砂は落ちてこないし土の感触も程良く冷たくて気持ちいいし、いい感じに暗くて落ち着くな〜。
そんなことを思っているとほどなくして眠気が襲ってきてうとうとしているとあっという間に眠りに落ちていた。
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「Aさん…Aさん!」
「…んあ?……んだよ」
腹部にかかる重みと耳に届く声に重たい瞼をあけるとそこにはふわふわの髪質をした紫の少年がいた。心なしかほぅと安心したように息を吐いている。
名前は確か……お茶の名前の……
「綾タカ?」
「一文字だけあってます、僕は綾部喜八郎です」
「あぁ、綾部ね……でなんでアンタがここにいるんだ?」
「Aさん、皆が探してますよ」
綾部は私の質問に答えることなく言った言葉に私は首を傾げた。
確かに私は穴に落ちたけどそんなに探すような時間はたってないはず……
そう思い綾部越しに空を見ると青かった空の色が茜色に染まっていた。
私どのくらいの間寝ていたんだ?
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2016年1月30日 13時
