８６馬鹿 無鉄砲で何が悪い ページ36
「あぁ、聞いたんだ。いえいえ、当たり前のことをしたまでですよ。気にせんでください」
「だけど君、庄左エ門を助けるために山賊にワザと捕まったらしいね」
「えぇそうですね……それが何か?」
私はわけが分からず首を傾げていると土井先生はハァと大きなため息をついた。
ため息ついていると幸せが逃げるぞー。
「いいか、貴方は女性なんだ。助けるためとはいえ危ない真似をしては駄目だ」
「うーむ、その時にはそういう考えには至らなかったよ……まぁ今度そんな場面があったら気を付け
ますよ」
「……本当に分かっているのか?」
土井先生は私を疑いの目で見てくる。
私は元の世界でなぜかよく不良に絡まれていたから喧嘩には慣れているんだけどな〜
土井先生は心配しすぎなんだよ〜
私は二度適当に返事をしてその話を終わらせた。
土井先生はまだ何か言いたげな顔をしていたが、これ以上お説教は聞きたくない。
「ほら、早く食べちゃってくださいよ土井先生。後片付けが出来ないじゃないですか」
「あ、あぁすまない」
そういい土井先生は慌てて残りを食べていく。
この調子ならすぐに食べ終わるだろうと思い、食べたらカウンターに置いておいて欲しい事を伝え私は厨房へと向かった。
しばらく厨房の片づけをしていると土井先生が盆をカウンターに持って来たようだ。
「ごちそうさまでした。」
「お粗末さまでした。」
「秋里さん……無鉄砲な行動はいつか己の身を滅ぼすことになるよ」
「……肝に銘じておきます」
土井先生が真顔でそう言ってきた。
私はふざけて言う雰囲気ではないと感じ、当たり障りのない言葉を吐き出した。
その答えに満足したのか分からないが土井先生は「それじゃあ、おやすみ」と微笑みながら去っていった。
「無鉄砲ね……秋里家の人間は皆そうなんだよね〜」
そう私は誰もいない厨房の中で呟いた。
おばちゃんは今席をはずしている。
家族の面影を思い出しながら私は土井先生の出した食器を洗い始めた。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2016年1月30日 13時
