９７幻獣 崖を登るとかどんなびっくり人間なんだよ ページ47
その決断を聞いた私はすぐに準備に取り掛かった。
まずカルーちゃんに乗ったビビさんを絶壁の傍に待機させシルフにいつでも突風を巻き起こせるように指示を出し、タイミングを計る。
「待ぁ〜ちなさいってばぁ〜!!食ってやるわアンタたち〜!!」
「来た! 準備はいい!?」
「えぇ!」
「よしっ! シルフ、上に向かって突風を!!」
私の声掛けに反応したシルフが風を呼び集め爆発的な風で私たちは勢いよく上へと上昇した。
「よっしゃッ! 成功だ!」
「やったわ! ……あれ?」
上まで後少しというところで突風は徐々に勢いをなくし最後にはただの風になってしまった。
クソッ! ここまで来て……!!
風の助けをなくしたカルーちゃんの足はスカッスカッと空を蹴っている。
このままではカルーちゃんは重力のままに落ちてしまう。
「んがーはっはっはっは!! バカねいっ!! さぁさっさと落ちてオカマケンポ―の餌食に……」
もう落ちるしかない。そう思った瞬間、カルーちゃんは翼を勢いよくはためかせ少しずつ前進して崖の端にしがみ付いたのだ。
飛べない鳥が飛んだ瞬間である。
「何ソレ!?」
「す、すごいわカルー!! あなた今空を……! ここまで来ればMr２も流石に追っては……」
「いや、そういうわけにはいかないみたいだよ」
まだシルフちゃんを出しているおかげで宙に浮けている私は急いでカルーちゃんを引き上げながらそう言う。
崖の下を見るとオカマ野郎は凄い勢いで崖を上がってきているのが見える。
「オカマに不可能はないのよう!」
「いや、そこは不可能にしとけよ! 人として!!」
「Aさん、ツッコみ入れている場合じゃないわ!」
「あ、確かに……」
あまりにも人間離れていたからついツッコんでしまったが、ビビさんの言う通り今はこんな奴にツッコミを入れている場合ではない。
カルーちゃんを引き上げ前方を見据えると、反乱軍と国王軍が激しくぶつかり合っているのが見える。
剣と剣がぶつかり合い火花を散らし、辺りには銃声が鳴り響いている。
その銃の火薬の匂いと血の匂いが混ざり合い、むせ返るような匂いが鼻につく。
傍にいたビビさんは、辛そうに歯を食いしばっている。
「この間を通るしか道はなさそうだけど……どうする?」
「……この戦場を抜けて王宮を目指しましょう。そこにおそらくチャカがいると思う」
「分かった! カルーちゃん行ける?」
私の問いかけにカルーちゃんは弱々しくながらもハッキリと鳴いた。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2016年8月29日 22時
