９４幻獣 反乱軍に届け ページ44
「カルーちゃん、すんごく震えてるけど本当に大丈夫?」
「クエ―!」
私より小さい生き物は大丈夫と言いたげに大きな声で鳴いた。
この子も覚悟をしているんだ。ならその覚悟を受け止めるか。
カルーちゃんに向けていた視線を前方に向けると遠くから小さい影がいくつも見える。
砂埃を舞い上がらせながらこちらに向かってくる影は、今から止めるべき反乱軍だ。
影たちがそれぞれ人の形だと理解できるまで近づいてきた時、隣にいたビビさんが一歩前に躍り出で大きく両手を広げて声を張り上げた。
「止まりなさい!! 反乱軍!!」
「この戦いは仕組まれているんだ!! 止まれ反乱軍!!」
ビビさんと同じように私も喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
昔から声だけは大きいと言われていたが、この地鳴りのような足音で届くか?
しかし、ビビさんと私の必死の叫びは彼らには届いていないようで足音がやむ気配がない。
しかし、叫ぶのをやめない私たちはなおも声を張り上げ続ける。
その時ふと嫌な気配を感じた私は、すぐにビビさんを私に引き寄せた。
引き寄せた次の瞬間、ボウンッ! と何かが地面に落下しそのまま破裂したのだ。
ビビさんを引き寄せなければ、ビビさんはこの砲弾の餌食になっていただろう。
「こ、これじゃあ視界が……! なんてバカなことを」
「ビビさん! 前!」
後ろを気にしていたビビさんに前を向く様に言うと、彼女はハッとした。
もう前方には反乱軍が迫っているはず、今この時を逃せばここでのチャンスは水泡に帰してしまう!
「駄目よ! 止まって!! "リーダー!!!"」
「話しを聞けや反乱軍!!」
若干怒りが出てきた私は怒りのままに言葉を吐き出す。
前を向いたまま叫んでいると隣にいたビビさんの横を黒い馬が駆け去ると、ビビさんの顔が変わったのを私は気づいた。
彼女はすぐに黒馬の後を追おうとするが、後ろから猛然とやってくるラクダたちがそれを阻む。
ラクダに蹴られバランスを崩したビビさんをカルーちゃんは自分の体で守ろうと彼女の上に覆いかぶさった。
そんな勇気あるカルーちゃんをラクダたちは気にもせず踏みつけ、蹴り倒していく。
私はすぐに助けに行こうと足を踏み出すが、私自身も猛然と襲ってくるラクダたちに踏みつけられたりされて思うように動くことが出来ない。
ようやく動けるようになったのは、反乱軍が私たちを通り過ぎた後だった。
ラクダに踏まれたことにより右肩を痛めた私は、痛む肩を抑えながらビビさん達の傍に駆け寄る。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2016年8月29日 22時
