【MHA】二つの口は愛を語りたい＝第三部＝ (ページ9)

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109話ページ9

脳をフル回転させなんとか五分で聞きたい事を聞くことが出来た私は、小さく息を吐き零しながら持っていたメモ帳をポケットへしまう。
爆豪君、質問してる間ずっとヒーローらしからぬ顔で睨んでくるから滅茶苦茶怖かった。
だがしかし、あんな怖い顔してても私の質問にはちゃんと答えてくれていたから、きっと根は優しいのだろう。

「あの、ありがとうございま」

「うっせぇ!! 用が済んだんならさっさと去ねやっクソがっ!」

話を聞かせてくれたお礼を言おうとした瞬間、ガァと勢いよく吠え付かれた弾みで己の肩がギクリと震える。
……前言撤回。
彼ほど"優しい"という言葉が似合わない人はいないな、うん。

今にも噛みついてきそうな闘犬のような顔で威嚇しながら舌を打ちその場を去っていく爆豪君の後姿を見送りつつ、私はそう心の中で呟く。

いや、去ねって言っときながらあんたが去るんかい。
なんてツッコミが喉から出そうになったが、これを口にしたら終わりな予感がしたためグッと堪えた。

いやしかし、人使君の為とはいえ本当に怖い人だったな爆豪君って。
人使君の為じゃなかったら一生関わり合いになりたくないタイプの人間ではあったが、それに見合うほどの情報は手に入れられたから良しとしよう。

いまだに恐怖からかバクバクと嫌な鼓動を続ける心臓を宥めようと数回深呼吸を繰り返す。
数回目の深呼吸でやっと心音が落ち着いてきた頃、私は人の気配のない静まり返った廊下を後にした。

＊

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爆豪君と会話してから数日が経ったある日の放課後、私はとある人物の前に立っていた。
その人物とは緑谷出久君、私の目的の最後の一人である。
彼は爆豪君とは違い私の呼びかけにびくつきながらも応じてくれた為、そっと心の中で安堵した。

爆豪君との会話の難易度がハード過ぎたおかげか、彼に比べると緑谷君に話しかけるのはとても易しいものだった。
まぁ爆豪君に比べたらどんな人でも笑顔で話しかけられるってもんだろう。

「突然のお声掛けに応じていただきありがとうございます。緑谷出久君」

「あっど、どうも。えっと――仁口、さんだったよね」

「はい、普通科の仁口です。まずは先日の体育祭お疲れ様でした、月並みの言葉ですがとても凄かったです」

「え、いやいやいや、あの時はもう一生懸命で、そのぅなんていうか」

激しい身振りをしながらそう謙遜しながらも最後には小さくありがとうと言葉を落とした彼に私も笑みを深めた。