【MHA】二つの口は愛を語りたい＝第三部＝ (ページ8)

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108話ページ8

いきなり五分とか言われても、いったいどうすればいいんだ。
彼の言葉の真意が分からず首を傾げるしか出来ない私に苛立ったのか、爆豪君がしかめっ面で大きく舌打ちをした。

「だぁかぁらぁっ! 俺の貴重な時間から五分だけやるってんだよ! 察し悪ぃなてめぇは」

「え、あ、ありがとうございます!」

舌打ち交じりにそう言葉を紡いだ爆豪君に向かって勢いよく頭を下げながら謝辞の言葉を口にする。
どういう心境の変化なのかと問いたいところだが、ここで変に言葉をかけて考えを改められても困る。

そう思い口を閉じた私はペンを持っている手に力を込めつつ、いまだしかめっ面をしている彼へと視線を投げる。
すると、彼はポケットに入っていたであろう携帯を取り出すとすっすっと指で操作する。

何をしているのかと聞いてみると、タイマーを設定しているのだと言葉が返ってきた。
たった五分という短い時間でさえきっちり計測するなんて、これは一秒のオーバーも許さないつもりだな、この男は。

なんとみみっちい男なのだろう、と心の中で別の意味で感心してしまう。
しかしこれを口に出したりなんかしたら、やっと掴んだこのチャンスを棒に振ることになるときちんと理解している為その事は決して口に出さない。

それから私は五分という短い時間の中で彼から聞くべき事項を頭の中で瞬時に選別し彼に問うた。
みみっちい彼の事だからあえて話を冗長するかと思ったが、意外にも爆豪君は、私の質問に対して至極真面目にかつ簡潔に答えてくれた。

彼から得た情報は思った以上に良い物だった。
思った通り彼はネットによくあるトレーニング法をそのまま実行しておらず、それに色々と負荷を加えて自分に合ったトレーニング法にしているらしい。

体育祭で見せた爆豪君のあのスタミナとタフネスさは、日頃の負荷の多いトレーニングによって作られたものだったようだ。
聞けば聞くほど十六歳の少年がする鍛錬ではない気がするが、これもヒーローになる為には必要なことなのだろう。

体育祭での爆豪君の戦い方を見る限り、彼の個性である爆破を利用した肉弾戦を得意としていると見た。
彼のその戦い方故に筋肉をつける為に負荷を多くしているようだが、人使君は爆豪君と違ってあんなバカスカ殴り合うような戦い方は合わないだろうから、この負荷の多さは要検討する必要があるか。

そんなことを考えながら、私は残り時間を頭に入れつつ手早くメモを取り続けるのだった。