106話 ページ6
「断る」
「なっ」
爆豪君から返ってきた答えは、極短い拒否の言葉であった。
まぁ彼の性格から素直に教えてはくれないだろうとは思っていたがやっぱりか。
だが、ここで諦めてしまったら意味がない。
「そ、そこをなんとか。普段しているトレーニング方法や筋トレの方法だけでも!」
「しつけぇ。教える気はねぇっつってんだろうが。つーかそう簡単に手の内を晒すとでも思ってんのかバーカ!」
「グッ、た、確かに」
瀬呂君がすんなり教えてくれたのが異様で、爆豪君の反応が普通なんだろうな。
それから何度かお願いしてみるが、彼の答えが変わることなくむしろ不機嫌度のメーターがドンドン上がっていくだけだった。
「だぁかぁらぁ! しつけぇって言ってんだろうが! このクソ雑魚
「ですから! そこをなんとかお願いしますっ。ほんの少しでいいですから!」
「グイグイ来んじゃねぇ! メモ帳なんか持ち出しやがってデクかてめぇは!? つか女のてめぇが聞いたところで、てめぇの身にはなんねぇわクソが!」
両の手の平からボムボムッと爆発させながらそう言う爆豪君に、私は瀬呂君にしたと同じ説明を手早く口にする。
全て説明し終えると、意外にも話を最後まで黙って聞いていた爆豪君は一瞬呆けた顔をした。
しかし、そんな顔も本当に一瞬ですぐさま心底呆れ切った表情になりその顔のまま深くため息をついた。
「じゃあなにか? てめぇはその野郎の小間使いってわけか?」
「小間使いって、言い方よ。これはあくまで私の自己満足。彼に命令されてやってるんじゃないです」
「なんだ、これが自己満足って自覚してんのか」
ハッとあざ笑うかのように鼻で笑いながらそう言う彼に、私はコクリと首を縦に振る。
そう、彼の言う通り、私がやっていることの全ては彼の役に立ちたいと思う私の自己満足。
だがそれでも、彼の為に出来ることは何でもしてあげたいのだ。
「爆豪君の言う通り、私の行動の全ては自己満足です。ただそれでも、ジッとはしてられないんです。彼の為に出来る事ならなんでもしてあげたいんです」
敵を倒す力も強い個性もない、ないない尽くしの私に出来る事なんてたかが知れているだろう。
それでも、ただ立ち止まって何もしないなんて選択肢など私には存在しないし、仮に存在したとてそれを選ぶわけがない。
そう改めて思いながら、私は静かに爆豪君へと視線を向けた。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2023年11月18日 17時
