130話 ページ30
警部に名指しされた女性のプロヒーロー"サイコメトリス"。
本名は
彼女の個性"サイコメトリー"は、物体に触れるとその物体に残った残留思念を読み取ることが出来る個性で、その個性を使いこれまでも物的証拠が残っている事件を何度か担当しているのだ。
閑話休題
サイコメトリスに髪留めが渡されるのと同時に他のヒーロー達に配られたのは、数枚重ねられ端をホッチキスで留めた書類だった。
さらりとした紙の上に視線を滑らせると、そこには数人の男の顔が大きく書かれていた。
どうやら書類だと思ったコレは似顔絵らしい。
「そちらは、うちの似顔絵捜査員が描いた犯人と思わしき似顔絵です。捜査員は触れた相手の記憶にある光景を"視る"ことの出来る"ビジョン"という個性でして信憑性は高いかと」
「――こいつは、五年前に未成年誘拐未遂で捕まった奴じゃないかっ」
「こっちの奴は前に強盗致傷で実刑判決くらった奴だぞ」
プロヒーロー達の口からこぼれる驚愕の声を聞きながらパラパラと紙の束を捲っていた相澤の手がある一枚でピタリと止まった。
その紙には、相澤にとって見覚えのありすぎる少女が描かれていた。
「――仁、口」
相澤の乾ききった口からころりと落とされた言葉は、あまりに小さすぎて誰の耳にも届くことは無かった。
「おい、この四枚目に描かれてるこの少女も犯人なのかい?」
「あぁそれは――」
「違う」
ここ最近名の売れ始めた男性プロヒーローからの疑問に答えようとした警部の言葉を、相澤の否定の言葉で遮る。
今まで黙ったままであった相澤の突然の言葉に、周りは怪訝そうな表情を浮かべ相澤を見やる。
「イレイザーヘッドの仰る通り、四枚目の彼女は今回の被害者を助けようとした少女であると被害者が証言したので間違いありません。してイレイザー、彼女は?」
「……彼女は雄英高校の普通科に通う女子生徒です。俺も彼女とは面識があります。それで、彼女は」
「被害者である子供の証言では、近くの大人を呼んでほしいと言われた後に近くでパトロールをしていた警官と共に現場へ戻った時には既に誰もいなかったとのことなので、おそらくは」
「……犯人に連れ去られた可能性が高い、と」
悔し気に眉をひそめながらそう告げ言い淀んだ警部の言葉の続きを相澤が補足すると、警部は同意するように小さく首を縦に振った。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2023年11月18日 17時
