【MHA】二つの口は愛を語りたい＝第三部＝ (ページ29)

今日:5 hit、昨日:29 hit、合計:725 hit

129話ページ29

電話で指示のあった近くの警察署につくと、相澤を待っていた警察官の一人がビシッと敬礼してみせる。
そんな警察官に軽く会釈を返すと、警察官は「こちらへ」と奥の部屋へと案内した。

ここです、と連れられた部屋に足を踏み入れると、そこには数人の警察とプロヒーローの姿があった。
どうやら相澤が最後だったようで、この場を仕切っているのか警察官が咳払いの後に口を開く。

「えー、プロヒーローの皆様方。本日はお忙しい中要請に応じてくださりありがとうございます。警部の○○と申します」

顔にうっすらと皺の刻まれた四十代前半の壮年の男は、礼儀正しく頭を下げそのまま話を続ける。
警部の話によると、最近世間を騒がせているあの事件で警戒を強めて見回りをしていた警察に一人の少女が助けを求めたのが始まりらしい。

自身を守ろうと囮となった女の人を助けてほしいと告げる少女に導かれすぐに警官が現場に赴いたが、不審者は既に逃亡した後だったという。

「なぁ警部さんよぉ。俺達は今世間を賑わせやがる連続行方不明事件だと聞いてここにいるわけなんだが? 今回の事件は何か関係があるのかい?」

「……先の事件では異形型の個性を持つ児童が男女問わず行方が分からなくなっています。今回の被害者の少女も、ヤマネコ"という異形型の個性の持ち主でした。故に今回の事件も先の事件と関連があると我々は考えています」

薄い色のサングラスの向こう側で厳しい目を向けた筋肉粒々のプロヒーローに、警部は淡々と言葉を続け軽く頭を下げた。
警部の言葉に納得したのか、プロヒーローは「分かった」と短く言葉を返し再び話を聞く体勢に戻った。

「そして、捜査を続けた結果……現場からこのような物が発見されまして」

そう言いながら警部が取りだしたチャック付きのポリ袋に入った物体に、相澤は驚きからその目を大きく見開いた。

小さなポリ袋に入れられていたのはラベンダー色の花柄のバレッタであり、それはよくあの子が身に着けていた物と同じものだった。

違う、アレはアイツのじゃない。アイツが、仁口がまだ帰ってないのは何か別の理由だ。この事件に仁口は関係な――。

「透視ヒーロー"サイコメトリス"さんには、現場に残されていたこちらの髪留めから事件の記憶を読み取っていただきたく――っとそうだ。ヒーローの皆様にこちらをお渡しします」

相澤の思考を遮るように警部は話の続きを口にした事で、相澤は脳内に浮かぶ最悪のシナリオを打ち消した。