【MHA】二つの口は愛を語りたい＝第三部＝ (ページ26)

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126話ページ26

帰ったら子供達と何して遊ぼうか、とあれこれ案を頭に思い浮かべながら歩いていると、何なら普段では聞くことのないような妙な物音が耳をついた。
何事かと音のした方へ首を向けた先は、いつもなら絶対に足を踏み入れない路地裏だった。

夕方なのも相まって更に薄暗く感じる路地裏から聞こえてきた物音に対し何か嫌な予感を覚えどうしようかと数秒迷ったが、意を決してその路地裏へと足を向けた。

万が一不審者がいた場合、すぐにブザーを鳴らせるようブザーの紐に手をかけながら薄暗い道を進んでいく。
すると、進むにつれて物音の音量が大きくなっていき物音の正体が分かっていく。

空気を揺らす車のエンジン音。

服同士が擦れ合うような音。

数人の大人の言い争う低い声。

声からして女の子であろう子から上げられた小さな悲鳴。

これだけ揃えば、誰でも状況を理解できる。
間違いない、これは人さらいだ。

そう確信した私は、勢いよく駆け出して路地裏を飛び出して抜けた先は車が一台通れるほどの細い道路になっていた。
そして、右へ視線を向けると黒いワゴン車の前で二人の男が、まるでファンタジー作品の獣人を思わせるような風貌をした小学生くらいの女の子を抑え込んでいた。

今にも黒いワゴン車に連れ込まれそうになっているその女の子を視界に入れた瞬間、後先も考えず息を思いっきり吸い込んだ。

「その子から手を離せっ!!」

そう声を張り上げるのと同時に手に掛けていた防犯ブザーの紐を思いっきり引っ張ると、次の瞬間には空間を振るわれるほどの大音量のブザー音が辺りに響き渡る。

突然の第三者の登場とけたたましい爆音で驚いたのか、男達の拘束から抜け出してきた女の子がこちらに向かって駆け寄りだす。
私の膝元に抱き着くその女の子を後ろに庇いながら、今も鳴り続ける防犯ブザーをスクールバッグごと男達がいる方向へ思いっきり投げつけた。

バッグが地面に落ちるのを見届ける間もなく、私は女の子の小さな手を引いて男達とは反対の方へ体を向け走り出す。

防犯ブザーは鳴らした後そのまま持っていては逆上した不審者が向かって来る危険性がある為、逃げる方向とは逆の方向へと投げたほうがいい、そうすれば不審者の意識を対象とブザーの二つに分散させることが出来るのだと園長から知識として聞いていた。

出来るだけ遠くにいくように投げたつもりだが相手は二人だ、なんとかして距離を稼がないと。
自身の額に暑さとは違う汗がたらりと流れた。