【MHA】二つの口は愛を語りたい＝第三部＝ (ページ25)

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125話ページ25

毎日のように帰りのホームルームでは担任から気を付けるよう声がかけられ、生徒は不安感を募らせながら帰路につく。

少しでも不安を和らげる為かクラスの子はそれぞれに声を掛け合い連れだって帰っていき、そんな人達を横目に友達のいない私はいそいそと帰り支度を済ませる。
スクールバッグに付けられた少々小ぶりな防犯ブザーを揺らしながら、まだ少しざわつく教室を後にした。

ちなみに、この防犯ブザーは園長から渡された物だ。
最初は両手に抱えても余るほどのブザーを渡されそうになったが、副園長の鶴の一声でブザーの数は一個になった。
なお、この渡された防犯ブザーは小さいながらも91㏈と大音量で音がなるのに加え、チカチカとライトが点滅する仕様となっていると、園長が自信満々に言っていた。

その後、こんこんと彼女に叱られて小さくなった彼のその背中を見て"何してるの?"と質問責めしてくる子供達を宥めるのには苦労したものだ。

閑話休題

歩き慣れた通学路を一人で歩きながら、首筋に流れる汗をハンカチで軽く拭う。
夏休みも目前となった現在、立っているだけで汗が出てくるほど暑い日が続いていた。

自身の汗でへばりつく襟元のあまりの不快感に、みっともないとは自覚しつつもゆるりと赤いネクタイに手をやり少しだけ緩ませ一番上のボタンを外す。
すると、風が通り抜けたのか先ほどと比べてほんの少しだけ涼しさを感じほぅと息をついた。

女子がこんなだらしない格好をしているだなんて、人使君の前では絶対に見せられないな。
襟元を数度ばたつかせ更に風を送り込んで涼みながらそう独り言ちる。

あの連続行方不明事件がニュースで大きく取り上げられた頃から人使君が一緒に帰ってくれていたのだが、今日は久しぶりに特訓があるとのことらしい。
いつもなら彼の特訓が終わるまで待つのだが、生憎私には用があるのだ。

それは、先の連続行方不明事件で小学校や幼稚園も休校休園が続き、友達と遊べず不満の溜まった子供達の相手のしなければならないというものだ。
外で思う存分友達と遊べず元気のあり余った子供達の相手を毎日している園長夫婦が日に日にやつれているのを見て、これはいかんと思い今日は私が子供達の相手を申し出たのだ。
まだまだ遊びたい盛りの子供の体力を甘く見てはいけない、気を抜いたら倒れるのはこちらの方である。

それに、ここまで育ててくれた二人に少しでも恩返しが出来るのなら多少の筋肉痛くらいなんてことはない。