164話 ページ14
傷口から迸る赤い飛沫を撒き散らしながら倒れ込み悲鳴をあげる男に、雑渡は冷ややかな視線で見下ろす。
片腕となった男の傍には、忍刀を手にした幽鬼のように立ち尽くす尊奈門の姿があった。
怒りからか荒くなった呼吸を無理やり抑えているせいか、食いしばった歯の隙間からフーフーと荒い呼吸が僅かにもれ出ている。
まるで、目の前の男を殺すのを我慢しているかのようだ
「ヒィッ!」
視線だけで人を殺せそうなほどに目を吊り上げ男を睨みつける尊奈門に怯えたのか、男から情けない声が口からこぼれ落ちる。
そんな光景を目にした雑渡は、冷笑を浮かべつつ口を開いた。
「尊奈門、よく我慢した。だが、もう一本くらい落としておこうか」
雑渡のその言葉に短く応え忍刀を構えた尊奈門は、その指示通りに今度は男の左腕を斬り落とした。
恨み、怒り、嘆き、憎しみ、様々な感情が入り混じり振るわれたその速い斬撃に、忍たま達は目を見張る。
男から再び舞う血飛沫までも憎々し気に睨みつける尊奈門に、雑渡はやれやれと肩をすくめながら男に近づく。
雑渡は痛みから呻くばかりの男の両腕の切り口に手早く縄を回し締め上げ血を止める。
助けられたと思ったのか男の目に微かに希望が宿るが、雑渡はその目に嘲笑を浴びせた。
「何勘違いしてるか知らないが、お前にはまだまだ聞きたい事が山とある。それに――お前を楽に死なせるつもりもない」
冷たく言い放たれた雑渡の言葉に、男の目には希望から一変し絶望一色に染まる。
もはや白いまでもある血の気の引いた顔色に満足し男を素早く拘束した雑渡は、未だ呆然とする忍たま達に静かに声をかけた。
「コレとコレの部下達は我々タソガレドキが引き受ける。こちらの学園長にも許可は得ている」
「……学園長がそう仰るのなら」
雑渡が発したその言葉に、六年の立花仙蔵がそう答える。
彼の返事に満足したように首を縦に振った雑渡は、今度は己の部下である尊奈門に声をかけた。
「行くぞ、尊奈門」
いつもの尊奈門なら声をかけられたらすぐに返事をするのだが、今の彼はある方向を向いたまま微動だにしない。
部下の向いている方向に、雑渡はあぁと声をもらす。
彼が一心に見つめる方向にあるのは、Aが運ばれていった医務室だ。
「尊奈門。今のお前が行っても、足手纏いなだけだ。伊作君と保険医の新野先生を信じるんだ」
幼い子を諭すような物言いをする上司の言葉に、尊奈門は少しの間の後弱弱しく頭を下げた。
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長月シキカ(プロフ) - mozomozoさん» コメントありがとうございます！レスが遅くなってしまい申し訳ありません。この作品ではキャラの心理描写に気をつけながら作り上げたので、mozomozo様のお言葉とっても嬉しいです^ - ^閲覧感謝です♪ (7月13日 17時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
mozomozo(プロフ) - とっても素敵なお話でした。何より心理描写が綺麗で本当に惹き込まれました。 (7月1日 2時) (レス) @page30 id: c5d40106d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2022年10月28日 0時
