爆豪勝己 ページ2
「出せやゴルァァァ!!」
真っ白い部屋の中に爆豪君の怒号と爆発音が反響し消えていく。
爆豪君が渾身の力で放った攻撃も、この部屋の壁に傷一つつける事は出来なかった。
「チィっ! 俺をこんなとこに閉じ込めた奴、出たら覚えとけよ」
「爆豪君、ヒーローらしからぬ顔で何言ってるんスか」
「るせぇ! クソ女!」
「はいはい。君の口の悪さにもいい加減慣れてきたっスよ。とりあえず落ち着くっス」
そう言いながら座るよう促すと、爆豪君は大きな舌打ちをしながらも私の正面にドカッと腰をおろした。
「さて、爆豪君の爆破でも傷がつかないとなると……やっぱりこのお題をクリアするしか方法はないみたいっスね」
「あ゛ぁ!? 誰がそんなことするかっ!」
「だけど、お題をクリアしないと永久にここに閉じ込められたままっスよ? それでもいいなら自分は構わないっスけど」
どうするっスか? と聞くと、爆豪君はグッと息を詰まらせ目線を泳がせ始めた。
そして意を決したのか、ギロッと私を睨みつける。
その鋭い眼光に私は思わず姿勢を正す。
蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのことだろう。
「……おい」
「は、はい」
「紙っきれ、寄越せ」
私を睨みつけたまま爆豪君がそう言うので、私は手の中にあった紙を爆豪君に手渡した。
手渡された紙をひったくるように取った爆豪君はその紙に書かれた字を読むと、より一層眉間にシワを寄せる。
「チッ! ……」
舌打ちの後の長い沈黙の後の末、小さく言葉を発した。
「てめぇは……クソお節介なとこはクソ腹が立つが……まぁ、良いんじゃ、ねぇか」
ほんのりと頬を赤く染めながらそう言う爆豪君に、少しだけ面食らってしまった。
若干爆豪語が混じっているが、爆豪君にしてはいい方だろう。
「おい、次はてめぇだろうが。さっさと喋ってさっさとこっから出るぞ」
「あ、あぁ。そうっスね、えーと……」
紙の内容は"お互いの良い所を言わないと出られない部屋です"だったっけ。
私は紙に書かれた字を思い出しつつ、爆豪君の良い所を思い出す。
「爆豪君は……ちょっと言動は悪いけど、誰よりも頑張り屋さんな所は良い所っスね」
そう笑みを浮かべ言うとカチャリと鍵の開く音が小さく耳に届く。
それと同時に、爆豪君が真っ赤な顔でら立ち上がった。
「恥じぃこと言ってんじゃねぇ!!」
「え、なんで!? ウギャアァァァッ!!」
出口の空いた真っ白い部屋の中に怒号と爆破音と悲鳴が響き渡るのだった。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2018年5月31日 16時
