４３無個性 ページ43
夢彦からの誘いに答えを出せないまま早くも一週間が過ぎてしまった。
未だに答えは出ていない。
確かに、心のどこかでまだ医者として歩む道を望んでいるかもしれない。
だが用務員としての幸せややりがいを感じている今、この仕事を離れたくない。
頼りになる先輩たちとの仕事、可愛い生徒たちの笑顔、それら全てが今の私の大事なものなのだ。
昔の自分が、そしてどこか心の隅で抱いていた夢よりもずっとずっと大切な宝物なんだ。
「やっぱり、断りの電話いれるか」
「どこに断りの電話をいれるんだ?」
「っ!? ビックリした! 急に背後に立たないでくださいっスよ。相澤先輩」
「何度か声はかけた。というか廊下のど真ん中で突っ立ってるお前が悪いんだろう」
呆れたような視線で私を見下ろす相澤先輩に「す、すみません」と謝罪の言葉を口にする。
この人、ヒーロー引退したらお化け屋敷のスタッフにでも転職できるんじゃねぇか?
なんてことを思いつつ相澤先輩を見上げると、彼は思い出したかのように口を開いた。
「で、どこに断りの電話をいれるんだ?」
「えぇ、実は―――」
私は夢彦の誘いの件のことを先輩に話した。
あのクソ妹の事件以来、何かあれば言うよう言われていたため、私はためらいもなく先輩に伝えられるのだ。
「なるほどな。まぁお前が出した結論なら、部外者である俺がとやかく言うつもりはねぇ。しいて言うなら本当に後悔しねぇかどうかだ。お前にとっちゃそいつの誘いは願ってもないチャンスなんだからな」
「……後悔は、ないっス。それに今のままでもリカバリーガールの手伝いとかで怪我人等の手当てはできるっスし」
「そうか、ならいい……ま、これからもこき使ってやるよ」
「お、お手柔らかにお願いするっス」
にやりと口元に笑みを浮かべる先輩に、思わず口の端をひくつらせてしまう。
一体どんだけこき使われるのだろう、と嫌な妄想をしていると相澤先輩から喉を鳴らすような小さな笑い声が聞こえてきた。
「クククッ……冗談だ」
「冗談に聞こえないっスよ」
「まぁ、これからも頼むわ。じゃあな」
そう言い私の頭に手を乗せポンポンッと弾ませた後、先輩は私に背を向け歩き始めた。
私はぬくもりが微かに残る頭に手をやりながら、若干猫背気味の彼の背を見送る。
そして見えなくなったのを確認し、私は止めていた足を動かした。
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長月シキカ(プロフ) - メホニアンさん» コメントありがとうございます！マイク先生も相澤先生もかっこいいですよね^ ^ 更新頑張りますのでよろしくお願い致します！閲覧感謝です^ ^ (2017年11月28日 13時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
メホニアン(プロフ) - トマトを食べた後のマイク先生に、キュンとしました。優しい相沢先生に惚れました。更新頑張ってください！！ (2017年11月28日 13時) (レス) id: dbe6c4db20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年11月4日 23時
