５０無個性 ページ50
その場に座り込んだ心操君に私は言葉を続ける。
「そんな気持ちを持った心操君なら、いくら個性を使われても自分は信じられるんスよ」
「……変な、用務員」
そうボソリと呟く彼に私は「そうっス。自分は変な用務員っスよ」と笑うと、彼は一瞬目を丸くしたがすぐに小さく笑みを浮かべる。
彼の目元に小さな水の玉が浮かび上がったが、私はあえてそれを指摘することはしなかった。
男はいくつでもプライドを守る生き物だしね。
しばらくして落ち着いてきた心操君に、私は思い切って声をかけた。
「ところで、心操君はここで何してたっスか?」
「……猫が、いて」
「あぁ、そういえばここは猫スポットだったっスね」
「そうなんですか」
先ほどに比べてだいぶ柔らかくなった心操君の言葉にイエスと答えると、彼は嬉しそうに微笑む。
しかし、先程の水のせいで猫たちは散り散りになってしまったようだ。
その事に対して謝罪すると、彼は気にしないと答えてくれた。
「よし、良い子の心操君に良い事を教えてあげるっス」
「良い事、ですか?」
「そうッス。君は猫ちゃんが好きなんスよね?」
「え、えぇ……好きです」
「それなら、この場所でこうするっス」
キョトンとした顔をする心操君の目の前で私はピューと口笛を吹いた。
数回目の口笛を吹くと、どこからか一匹、また一匹と猫たちが私のもとへと集まりだした。
「すご……」
「この子達は自分が一年前くらいからたまにここでご飯をあげていたんス。勿論、校長には許可は取ってるっスよ」
笑みを浮かべながらそう言うと心操君は、嬉しそうに猫を撫で始めた。
この事を知っているのは私と相澤先輩だけだったのだが、心操君には相澤先輩のことは伏せて説明した。
心操君はこのことを自分に教えて良かったのか聞いてきたが、悪かったら教えていないと伝えると小さくお礼の言葉を述べ、柔らかく微笑んだ
そんな彼に私も笑みで返すと、耳につけた小型無線機からセメントス先輩の静かな声が聞こえてきた。
ヤバイ、そう言えばまだ仕事中だった。
「セメントス先輩!? い、今から向かうッス!」
そう言い無線を切った私は心操君に顔を向ける。
「自分が仕事サボってたことは内緒っスよ」
「は、はい」
「じゃあ!」
私は慌てて草むらを飛び出した。
そんな私を見て、心操君が小さく笑った事を私は知らない。
「――本当、変な用務員だよな。あの人」
そう言う心操に同意するように猫はみゃあと一声大きく鳴いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - あるたそさん» コメントありがとうございます! アパートの名前は自分でも結構気に入っていたので面白く思っていただけてとても嬉しいです＾＾この話は完結していますので最後まで読んでいただければ幸いです! 閲覧感謝です＾＾ (2017年11月13日 21時) (
レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
あるたそ - ふるそうwwwww面白いです！もう続編あるんだろうけど更新頑張って下さい！ (2017年11月13日 20時) (レス) id: d50254bc2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年10月1日 23時
