４２無個性 ページ42
指の痛みからか目にうっすらと涙の膜を張る緑谷君に、相澤先輩は口元に笑みを浮かべる。
その様子を見ていた生徒たちから小さな歓声が上がるなか、一人の生徒が大声と個性を発しながら緑谷君に駆け出した。
その生徒は、爆破の個性を持つ爆豪勝己君だ。
「どーいうことだこらぁ! ワケを言えデクてめぇ!!!」
「うわああッ!!!!」
爆豪君の気迫に怯え悲鳴を上げる緑谷君を庇おうと足を踏み出した。
私が緑谷君の前に立ち塞がった時に、私は既視感を感じた。
こういう状況、前にもあったような?
爆豪君との距離は数ｍしかない。
その瞬間、彼の動きが止まった。
いや、"止められた"のだ――相澤先輩の捕縛布で。
彼が操っているのは、炭素繊維に特殊合金の鋼線が編み込まれた"捕縛武器"だ。
簡単に言えば物凄く固い布で、私は捕縛布と呼んでいる。
「ったく。何度も"個性"使わすなよ……俺はドライアイなんだ」
鋭い目つきで睨みながらそう言う相澤先輩に、私は苦笑する。
凄い個性なのに本当もったいないな、この人。
「おい、さっさとボール取って来い」
「あ、ウッス……ねぇ先輩、彼の評価変わったっスか?」
そうボソッと小声で聞くと、相澤先輩は自分の個性を消しながらフッと笑みを浮かべ「さぁな」と言葉を濁した。
そんな彼に、私も笑みを浮かべ自転車をこぎボールを取りに向かうのだった。
＊＊＊＊
それから全ての種目が終わり、いよいよ結果発表だ。
単純に各種目の評点を合計した数が結果となり順位が決まる。
時間の無駄だといい相澤先輩は端末を操作し順位を映し出す。
総合的にみて、最下位は緑谷君にほぼ決まり。
それが分かっているのか、緑谷君は青い顔を下に向けギュッと目を閉じている。
まぁ、天地がひっくり返ることでもない限り彼は除籍され―――
「ちなみに除籍はウソな」
空に映し出した映像を消しながらそう言う相澤先輩に、生徒たちから驚愕の視線が視線が注がれる。
勿論、私も驚きを隠せず相澤先輩を見た。
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「はーーーー!!??」
ハッと笑う相澤先輩に、私は心の中でマジか、と思った。
合理的虚偽、なんて言っているが彼の除籍処分宣言は本気だった。
現に去年の一年生の一クラスを全員除籍処分にしている。
ということは、相澤先輩は緑谷君に可能性のようなものを感じたのだろう。
そうじゃないと、彼が前言撤回するなんてありえないのだ。
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長月シキカ(プロフ) - あるたそさん» コメントありがとうございます! アパートの名前は自分でも結構気に入っていたので面白く思っていただけてとても嬉しいです＾＾この話は完結していますので最後まで読んでいただければ幸いです! 閲覧感謝です＾＾ (2017年11月13日 21時) (
レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
あるたそ - ふるそうwwwww面白いです！もう続編あるんだろうけど更新頑張って下さい！ (2017年11月13日 20時) (レス) id: d50254bc2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年10月1日 23時
