１無個性 ページ1
ザァザァと激しい雨の音が広い部屋の中に木霊する。
この部屋の主である男は立派な椅子に腰かけこれまた立派な机に両膝をつき目の前で棒立ちしている女に目を向ける。
「……A」
「何スか? 父さん」
Aと呼ばれた女は目の前の男――自分の父親である
そんな笑みを浮かべるAに何とも言えない表情を浮かべる誠真は重々しいその口を開く。
「お前には長い事我慢させてしまったな」
「いいんスよ。それにこんなの我慢の内に入らないっス」
何でもないようにそう言いながらAはにこやかに笑みを浮かべる。
その顔の左目付近の痛々しい色をした痣を部屋の温かな色をした照明がぼんやりと照らした。
「それで、父さん。話って何っスか?」
「あぁ……実はな」
誠真はAに本題をぶつけると、Aは初めて笑顔とは違う表情をその顔に浮かべる。
そして、驚愕の色を隠せないAは勢いのまま誠真にくってかかった。
「父さん! それ本気で言ってるっスか!?」
「あぁ。私は本気だよA」
「本気って……そんな事したら、"あいつ"の"行動"は誰が受け止めるんスか!?」
「……私だって"あの子"の父親だよ。"あの子"の奇行くらい受け止めるさ」
「で、でも……でも!」
「A」
大きな机に手をついてなおも食い下がろうとするAの頭に誠真は優しく手を置いた。
誠真の突然の行動にAは思わず吐き出しかけた言葉を飲みこんだ。
「お前は本当に優しい子だ。私はお前のその優しさに甘え続けていた……今更で本当にすまないが、お前はもう自由になって良いんだよ。A」
「と、うさん」
「ほら、これをお前に渡そう」
誠真はAの頭から手を離し机の引き出しを開け中から一冊の通帳とカードと印鑑を取り出しAの目の前に差し出した。
目の前のそれらの意味を理解できないAに誠真は説明を始めた。
「これはお前の通帳だよ。少ない金額ですまないが、これでお前はお前のやりたい事をしてくれ。"あの子"の事は忘れてな」
そう言いAの手に握らせるとAはおずおずとその通帳を開き、再び目を大きくさせた。
それもそのはず、その通帳には五の後ろに六つのゼロが並んでいるのだ。
「どうか受け取って欲しい。今までお前に娘らしい事が出来なかったせめてもの詫びだ」
そう言い悲し気に目を伏せる誠真に、Aはすぐに誠真の傍に駆け寄り彼にきつく抱きついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - あるたそさん» コメントありがとうございます! アパートの名前は自分でも結構気に入っていたので面白く思っていただけてとても嬉しいです＾＾この話は完結していますので最後まで読んでいただければ幸いです! 閲覧感謝です＾＾ (2017年11月13日 21時) (
レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
あるたそ - ふるそうwwwww面白いです！もう続編あるんだろうけど更新頑張って下さい！ (2017年11月13日 20時) (レス) id: d50254bc2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年10月1日 23時
