69話 戻ってきた ページ19
時間的には短かっただろうが、私的には長く感じたキスも終わりを迎えてしまった。
ゆっくりと離れていく組頭の唇に、名残惜しさを感じつつボーっとする頭で先ほどの行為を思い出す。
「口吸いは、初めてだったかな?」
「そうですね。そんなのを体験する前にタヒんじゃいましたから……でも貴方が初めてで良かった」
「嬉しい事を言ってくれるね」
そう言い本当に嬉しそうに目を細める組頭に、私も嬉しくなってくる。
そういえば、組頭の覆面の下って何気に初めてだな。
そんな事を思っていると、私の体が少しだけ透けていっていることに気付いた。
自分の体の変化に、私は冷静にあぁもう時間なんだな、とどこか他人事のように感じられた。
私の変化に気付いた組頭が一瞬だけ目を見開いたが、すぐにこの変化が何を意味するのかを悟ったのか、少しだけ悲し気な色をその目に宿した。
そんな彼に向かって、私は静かに笑みを浮かべる。
「じゃあ先に行って待ってますから……」
「……あぁ。この世で全てを終わらせてから、そっちに行くよ」
「えぇ。どれだけかかってもいいですから、ちゃんと生きてくださいね」
「分かってるよ」
「では、しばしのお別れです。また……会いましょう」
「あぁ」
組頭のその心地よい声を聞いて、私を繋いでいた意識の糸はプツリと切れた。
*******************
ハッと我に返ると、ここは一度は来たことのある場所に私は立っていた。
ここは、地獄だ。
そうだ、あの世界で役目を終えた私は地獄に帰ってきたんだっけ。
「……閻魔様に会わないと」
私は閻魔様に会う為その場所から移動する。
近くの鬼さんに事情を話すと、すぐに閻魔様がいらっしゃる間まで案内された。
「おぉ良くやってくれたのぅ」
「いえ、あ、お守りと鏡をお返ししますね」
私は袖の中に入れていた巾着袋を閻魔様に渡すと、閻魔様は「おぉすまんのぅ」といかつい顔を少しだけ綻ばせて受け取った。
「そなたのおかげであの世界は崩壊を免れる事ができた。改めて礼を言うぞ」
「いいえ。此方もあの小娘に二発もぶん殴ることが出来たんで」
「そうかそうか……さて、そなたには何か褒美を取らせねばならんのぅ。あ、勿論生き返らせるというのは無理じゃがな」
「……でしたら、二つほどお願いしてもよろしいですか?」
指を二本立ててそう願い出ると、閻魔様は意外と簡単に「よいよい」と了承してくれた。
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長月シキカ(プロフ) - riemoa0323さん» コメントありがとうございます! こちらこそ多数の作品がある中当作品を閲覧くださり感謝申し上げます!! riemoa0323様のお言葉本当に嬉しいです^^最後まで閲覧感謝です♪ (11月14日 22時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
riemoa0323(プロフ) - コメント失礼致します、とっっっても面白かったです!このような作品はあまり見かけないので出会えたことにとても感謝しています、素敵な作品をありがとうございました! (11月14日 0時) (レス) @page22 id: a94f27965a (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - 夕さん» コメントありがとうございます! 主人公と組頭が再会するエンドにするか別エンドにするか最後まで迷っていていたので、夕様のお言葉大変嬉しく思います^^最後まで閲覧感謝です♪ (10月10日 14時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
夕 - とても面白かったです!最後に組頭と夢主が再会できた時はとても嬉しかったです! (10月10日 0時) (レス) @page22 id: 50676421a4 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 確かにこのようなタイプの話はここではあまり見ないですよね...。最初この話が思い浮かんだときは他人に受けるものか心配でしたが小桜様のお言葉に安心しました^^ こちらこそ最後まで閲覧感謝です♪ (2022年9月28日 21時) (レス) id: 594c035cea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年8月1日 0時