10話 睡眠と発見 ページ10
「ゼー……ハァ……も、もう歩けねぇや」
偶然にも人が座るにはちょうど良さげな切り株を見つけ、私はよっこらしょとそれに腰かける。
先程まで上を見ればキラキラとした木漏れ日が私や先の道を照らしてくれていたが、今はとっぷりと陽が暮れていて周りはもう真っ暗だ。
「このまま歩くのも危なそうだし、今日はこのまま寝るか」
私は大きな欠伸をひとつこぼし、あの思索にふけている有名なブロンズ像の格好を取り、そして目を閉じる。
地獄にいた時はなかった眠気が私を襲い、そんなに時間をかけることなく私は眠りの世界へと旅立った。
********************
Aが切り株に座り眠りについている頃。
少し離れた所で黒い影が木々の間を飛び交っていた。
「そろそろ仕事中に抜け出して忍術学園に行くの控えて下さいよ組頭」
「えー」
「えー、じゃなくて!」
自分の前を駆ける男を組頭と呼ぶ若い青年――諸泉尊奈門が男に吠え付く。
しかし、そんな尊奈門の言葉に全く動じない包帯を身体中に巻いた男――雑渡昆奈門はどこ吹く風で太い木の枝に乗り止まる。
その彼の行動にならい、尊奈門も近くの木の枝に止まった。
「どうかしたんですか?」
「ん? 喉が渇いたから飲むだけだよ」
「あー……って足揃えて座るのやめてくださいって」
「なんで?」
「……はぁ」
尊奈門は自分の額に手を当て、この人にこれ以上言っても駄目だと諦めの気持ちを心に秘めながら小さく頭を振った。
忍頭巾をつけたまま太いストローを使って竹筒の中身を啜る雑渡が、何かの気配を察知したのかストローを銜えたまま周りを見る。
「どうかしましたか?」
「……この近くに誰かいるな」
「え?」
昆奈門の言葉に、尊奈門も意識を集中して周りの気配をよむと、確かに誰かが近くにいる気配が感じられた。
気配の数は一つ。
「気配がだだ洩れなところを見ると忍びである可能性は低そうですね」
「……直接見てみれば分かるよ」
「え、ちょっ! 組頭!!」
尊奈門の制止の声も聞かず昆奈門は気配のする方へと駆け出した。
そんな昆奈門も、少し悩んだあげく彼の後ろを着いていく事を決めた。
しばらく木の枝をつたってついていくと、昆奈門はある地点で木から降りた。
そして、少し歩くと昆奈門は気配の正体を発見した。
「この娘が気配の正体だったのか」
彼の目の前には切り株に腰かけ目を閉じる若い女――Aがそこにいた。
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長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます!主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です! (2018年2月7日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年7月21日 0時