6話 犯人の名前 ページ6
余程急いで来たのかその鬼は、ゼーハーと息を荒くしながら閻魔様の傍に寄る。
そんな鬼に閻魔様は目じりに残った涙を拭い取りながら、その鬼に顔を向けた。
「なんだ今は大事な判決の最中だぞ」
「それどころじゃないんです! 亡者の一人が悪魔の手により無理やり別世界に渡航してしまったんです!!」
「何だと!? その亡者の名は!」
「はい! 亡者の名は射杜山 杞玻!(いとやま きは)」
「射杜山……」
鬼の言った名前に聞き覚えのある私はピクリと反応する。
射杜山杞玻、私を無残に殺した張本人の名前だ。
「この亡者は自分の両親とそこにいる亡者秋津Aを殺害したのち自害してあの世に向かい、騒ぎつつも亡者の列に無理やり並ばせましたが、どこからか悪魔が現れその亡者の願いにより別世界へと渡航してしまったんです!」
「別世界渡航……その亡者はどの世界の渡航を願ったのだ?」
「それが、現世のアニメを模倣されて近年に作られた"忍たま乱太郎"の世界に渡航した模様です」
「……最近の娘子の願いは分からんもんだなぁ」
「閻魔様! 現実逃避している場合じゃないですよ! 現にこの世界は崩壊寸前! このままでは他の世界にも影響が及び得る危険な状況です!!」
焦った様子で今がどんな状況でどれだけ危険な状況なのかを説明する鬼に閻魔様は「うむ……」と言葉をもらし何か考えているようだ。
そんな中、困っている人を放っておけないという損な性格が発動してしまい今なお深く考え込んでいる閻魔様に声をかける。
「あの〜、もしなんでしたら私もお手伝いしますけど」
「む!? 本当か!」
「閻魔様! 一亡者の手を借りるなど!」
「ですが、もうそんな事を言っている場合ではないのでは?」
私が鬼の一人にそう言うと、鬼は「た、確かに」と言葉をこぼした。
「困っている時はお互い様です。私に出来る事なら何でも致しますよ」
「……どうします? 閻魔様」
「ふむ……確かにこの案件は我々だけでは少々難がある。ここは元人間だったそなたに任せてみるか」
しばらく考えた後、閻魔様は私に手伝いの許可を出してくださった。
純粋にそれが嬉しく、私は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「それで、具体的に私は何を?」
「簡潔に言えばそなたには亡者射杜山杞玻の身柄を地獄に戻してほしいのだ」
「それはつまり、その小娘を殺さなければいけないのですか?」
そう問うた私に閻魔様は首を横に振ることで答えた。
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長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます!主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です! (2018年2月7日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年7月21日 0時