５話 泣いた閻魔様 ページ5
「うぉおおおおん! うぉぉぉおおおお〜〜〜〜ん!」
「あ、あの……そろそろ泣き止んでは?」
浄玻璃の鏡に映し出された私の生前の姿を見定めていた閻魔大王様が大きな声で泣き始めた。
子供をあやすように、出来るだけ柔らかい声色でなだめるが閻魔大王様はおーんおーんと泣き続ける。
しかし、強面の髭親父が大声で泣き叫ぶ姿は色々通り過ぎて、逆に怖いんだが。
そんな事を思っていると、閻魔様の傍にいた大柄の鬼たちがぼそぼそと話し始めた。
「まぁた閻魔大王の憐み泣きが始まったぜ」
「まったく、だが今回はいつより激しいな」
「まぁ、流石の俺達も少し憐れんじゃったしな」
「そうであろう! そうであろう! 永い事ここで審議をする為に浄玻璃の鏡を通し亡者の善悪を見てきたが、ここまで不憫な娘子は初めて見たわい」
そう言いながらズビーッと鼻をかむ閻魔様に私は「何もそこまで」と言葉をこぼす。
「確かに、小さい時二人の友達同士が喧嘩してて良かれと思って仲裁に入ると後々その二人が陰で私の陰口言ってたこともあるし、大学で出来た友人にはいつの間にか借金の保証人にされて相手の借金背負わされたし、大人になって出来た彼氏にはさんざん貢がされたあげくある日家財道具一式を盗られて逃げられたし、この就職難でようやく採用された会社がとんでもないブラックだったし、その会社の人間には無理な仕事を押し付けられるわ、他人のミスを何故か私のせいにされ理不尽な謝罪もさせられたし、二十連勤かつ七徹目でその次の日はようやっともぎ取った休日だというのに、友達もどきの小娘――いや女子高生に無残に殺されはしましたけど……なにも泣くこたぁないでしょうに」
「あーー! 改めて言葉にされるとさらに不憫に思えてきたーーー!!」
「俺だったら耐えられねぇよ!!」
「なんて娘なんだ!! うぉおおおんッ!」
改めて自分が二十二年の人生の中で起こったことをつらつらと言い連ねていくと、閻魔様と傍の二人の鬼たちが目に涙を浮かべながらおいおいと泣き始めた。
「まぁ確かに、私の人生は決して幸せだった断言できるものではありませんでしたけど、こんな私を愛してくれた両親と数少ない本当の友達がいた。それだけで、私の人生は確かに幸せでしたよ」
「……近年、稀に見る娘子だな。さて落ち着いたところで判決をいいわた」
「閻魔様ぁーーッ!!」
私の天国行きか地獄行きかの判決は今まさに言い渡されようとした時、一人の鬼が閻魔様に向かって駆け寄った。
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長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます！主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です！ (2018年2月7日 22時) (
レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年7月21日 0時
