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32話 願い ページ32

高坂先輩に教えてもらった道順でお風呂場にやって来た私は、いそいそと脱衣所に足を運ぶ。
中へ入ると、現代の古い旅館みたいな籠が沢山置かれた棚が目に入った。
旅館だと、この籠の中に着替えとか入れるけど、多分ここも同じだろう。


そう判断した私はたくさんある籠の中の一つの中に持っていたタヒタヒに装束と手拭いを置き、今自分の身に纏っている忍び装束に手をかけた。


するすると全て脱ぎ生まれたままの姿になり、脱衣所と浴場をつなぐ扉に手をかけスライドさせる。
浴場はまだ温かな湯気で充満しており、良く見えない。


これぐらいの視界の悪さなら、もし誰か来ても息をひそめていれば誤魔化せるかもしれないな。
高坂先輩の話が本当なら忍者隊の人達はもうここに来ることは無いだろう。


そう思いながらしっとりとぬれた床に足をつける。
もとより、某猫型ロボットのヒロインの様に長風呂をする質ではない為手短に入浴をすました私は早々に浴場を後にした。


脱衣所で体を拭きサラシを巻きタヒに装束を身を纏う。
一応合わせは逆にしているが、まぁいいだろう。
ここで生活する間は、この装束を寝間着にしよう。


そう心に決め私はそそくさと脱衣所を後にし、自分の部屋へと急ぐ。
脱衣所と自室からはそう離れていなかったおかげか、途中で誰にも会う事なく自室に戻ることが出来た。


自室の障子に手をかけ静かにスライドさせ、そのまま部屋の中に入ると、せんべいの様に薄い布団にダイブするとボスッと間抜けな音が部屋に響く。


この衝撃で舞い上がった埃臭い匂いが鼻につく。
決めた、明日絶対に布団干してやる。


そう固く決心しながら、私はハァと息を吐く。
今日一日しか経ってないのに、色々あったなぁ。


頭の中で今日あった事を順に思い出していくと、思わず苦笑が零れ落ちた。
他にも色々と考えたかったが、明日も早いだろうから早々に考える事を止めた。
いや、私に明日なんて本当に来るのだろうか。


人生何があるか分からないのは、前世で理解しているつもりだ。
明日になったら急に殺されるかもしれない。
私には自分の身を守る術はないから、もし斬りかかられたりされればあっという間に命を落とすだろう。
そうなってしまえば奴に世界を滅ぼされてしまう。
それだけは避けなければならない。


神様、仏様、閻魔様。
忍者隊の人達と仲良くだなんてたいそうな事は願いません、どうか、時が来るまで平穏で過ごせますように。


そう願いながら、私は目を閉じた。

33話 そうなりたいと願った覚えはない→←31話 根はやさしい人なのかも



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長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます!主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です! (2018年2月7日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年7月21日 0時

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