4話 浄玻璃の鏡 ページ4
生前の学生時代に中二病を少しだけ発病していた私は、地獄について調べたことがある。
確か、閻魔大王様含む十王の裁判が行われるんだっけ。
どの裁判官が何を審議するかまでは覚えていないが。
まぁ、何とかなるだろう。
「亡者 秋津A。入れ」
「失礼致します」
無駄に礼儀に煩いブラック企業で働いていたためか、ごく自然に九十度のお辞儀をして部屋の中に入る。
部屋の中心まで歩かされると、高い所から私を見下ろすお爺さんと目が合った。
「亡者 秋津Aで間違いないな」
「はい。私が秋津Aで間違いございません」
「……隈が酷いが、大丈夫か?」
「ブラック企業で二十連勤及び七徹目で、ようやっともぎ取った休暇前日に殺されましたからね」
「そ、そうか……だが、審議はせんといかんからな」
「大丈夫です。審議を続けてくださって構いません」
「では、審議を開始する」
地獄の裁判官の一人にまで心配されるくらい酷いのか、私の顔は。
そう喉まで出かかった言葉をグッと飲み込み、裁判官が問うてくる質問に正直に答えた。
そしてしばらく質疑応答が繰り返されると、目の前の裁判官は「ふむ」と言葉をもらす。
「これにて審議を終了する。次の審議の場所へ行くように」
「ありがとうございました」
やっと終わった、と内心ほっとしながら私は先ほどのお辞儀と同じ角度でお辞儀をする。
そして、傍に控えていた鬼たちの案内で次の裁判官の下へと向かった。
そこから計三人の裁判官の審議を受け私はついにあの有名な閻魔大王様の下へと連れて行かれた。
一際大きな門をくぐり部屋の中へと通されると、目の前に顔を真っ赤にさせた巨体の髭親父が高い所から私を見下ろす。
「お前が秋津Aだな」
「はい。よろしくお願いいたします」
ここにきて何度目かのお辞儀をして、真っ直ぐと閻魔大王様を見つめると彼は傍にいた部下らしき鬼に目で指示を出し、大きな鏡を持って来させた。
あぁ、コレがかの有名な"浄玻璃の鏡"か。
私は生まれて……いやタヒんで初めて見た浄玻璃の鏡に密かにテンションが上がる。
だが、すぐにこの鏡の意味を思い出し私のテンションはだだ下がりになった。
「この鏡にはお前の生前の行いが全て映し出される……では見るぞ」
閻魔大王様がそう言うと、私の姿を映した鏡が水面の様に揺れ始めた。
そして少しずつ私の生前の姿が映し出された。
102人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます!主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です! (2018年2月7日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年7月21日 0時