12話 包帯野郎との初対面 ページ12
「……ん、ぁ……?」
一瞬にして浮上した意識のまま目を開けると、そこは森の中ではなく見たことのない天井が目に入った。
え、私夢遊病の気があったっけ?
そう思い自分の記憶の棚を開いてみるが、そんな記憶は二十二年生きてきて一つもない。
じゃあなんで場所を移動しているんだ?
久しぶりに良く寝てスッキリした頭をフル回転させるが、なぜ自分が今ここにいるのかを考えていると、部屋の障子がスーッと開いた。
開いた障子の方を向くと、多分私よりも年下であろう青年が私の方を凝視していた。
その彼の表情はどこか驚愕しているようにみえる。
「あ!」
「はい?」
「く、組頭ぁぁぁああ!!」
そう叫びながらドタバタと廊下を走っていく青年をみて、私は一つ欠伸をこぼした。
頭はスッキリしているが、まだまだ寝たりないのか欠伸が止まらない。
三回目ぐらいの欠伸をし終わると、開けっぱなしだった障子の向こう側にあの森の中で見たあの男性がそこに立っていた。
そういえば、さっき叫びながら「組頭」と叫んだあの青年も昨日見たことあるな。
「ようやく起きたようで安心したよ」
「ようやく? 私一日しか寝てないですよ」
「何を言ってるんだ。君は一週間も眠り続けていたんだよ」
「はぁ一週間……え、一週間!? 嘘でしょ!?」
「嘘じゃないよ」
衝撃の事実を耳にした私は頭をガシガシと掻きながら抱える。
一週間……だからこんなに頭がスッキリしてるのか。
なのにまだ寝たりないって、どんだけ寝たいんだよ私。
「まぁ起きてくれたから良いけど……そうだ、君名前は?」
「あぁ、秋津と申します」
「……下は?」
「Aです」
「じゃあAちゃん。早速だけどうちの殿に会ってもらうよ」
「殿……?」
「そう」
包帯塗れの野郎にちゃん付けで呼ばれたことに小さな衝撃を受けている私に殿に会えとさらに衝撃的な指令が下された。
殿……殿って、時代劇とかでよく見るあの殿だよな。
目の前の野郎は極々自然にその言葉を言っている。
てことは、この世界は時代物っていうか時代アニメって事になるのか。
よく見れば目の前の野郎も和風な服着てるし、時代物アニメの世界でほぼ間違いないだろう。
てか自分で言うのもなんだが、理解力はえーな私。
毎日無理難題吹っかけてくるブラック企業で働いてただけあるわ。
「……聞いてる?」
自画自賛しているときに包帯野郎に声をかけられ、自分が思考にふけっているのに気が付いて私はすぐに言葉を返した。
13話 言いたい、けど言えない→←11話 寝てるのを起こすな
102人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
長月シキカ(プロフ) - 桜餅の塩漬け葉っぱさん» コメントありがとうございます!主人公や閻魔様のキャラどうするか結構迷ったので笑っていただけて本当に嬉しいです^ ^ 閲覧感謝です! (2018年2月7日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅の塩漬け葉っぱ(プロフ) - とっても面白いです。閻魔様と主人公のキャラが……www (2018年2月7日 22時) (レス) id: a55b533e90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年7月21日 0時