２５標的 帰ろうの段 ページ25
「オラが寝ている間に、大変なことになってたんだっぺなぁ……Aさんすまねぇことしただ〜!」
「い、いえ。今回は私達人間も悪いので、お気になさらず……それより酒呑童子さんにお願いがあるんです」
「Aさんの頼みなら何でも言ってくんろ」
胡坐をかいた酒呑童子がおおらかな笑みを見せる。
悪鬼王に取り憑かれていた時とは、えらい違いだな。
「この子達を、お願いできませんか?」
「……この玉は」
「心無い人間に無理やり起こされた妖怪たちの成れの果てです。どうか貴方様と一緒に眠らせて欲しいのです」
「そげなこたぁお安い御用だべさ! 鬼の子はオラの孫みてぇなもんだっぺ。オラと一緒に寝たらきっと寂しくはないっぺ」
「ありがとうございます」
私は深く一礼し、手の中にあった玉を彼に手渡す。
よし、これで今回の事件は解決だ。
「皆、ありがとう。皆のおかげで無事に解決できたよ」
「本当! 良かった〜。あ、でも俺達ほとんど何もしてないや」
「そんなことないよ。悪鬼王のことも沢田君がいなければ難しかったし、皆の力のおかげでこの事件は解決できたんだ。本当にありがとう」
「オラからも礼を言うだぁ。おめぇらちっこいのによぉくやったっぺな〜」
小さな玉を大きな手の平に乗せたまま、カッカッカと笑う酒呑童子さんに沢田君達は乾いた笑みをこぼすだけだった。
多分、ギャップの違いに驚いていたのだろう。
クロームちゃんは大きな片目をパチクリさせながら酒呑童子さんを見上げているし、雲雀さんにいたっては完全に興味が失せたのかそっぽを向いている。
どことなく彼のこめかみに怒りマークが浮かんで見える。
これは、よほど群れてるをがまんしているんだろうな。
私はこれ以上雲雀さんの怒りのボルテージを上げるわけにはいかないと、沢田君達の方に体を向ける。
「じゃあ皆。帰ろう、元の世界に」
「そ、そうだね!」
「なんかこの感じ、未来の時みたいだな」
ハハハと楽しそうに笑う山本君に私も、そうだねと言い笑った。
その後、兵助兄さんの力で狭間の世界から脱出した私達は早々に分かれた。
それから、数日後……。
授業中に居眠りをしてしまい、教師に教科書ではたかれて痛む頭をさすりながら沢田君達の輪に入る。
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2017年6月17日 20時
