#17 ページ18
某ホテル前に車を止めた俺は、
後部座席に座る二人を見た。
「おいおい、お前らは一応カップルって設定なんだからさぁ、なんというか、硬いんだよなぁ」
「そんなこと言われても…」
「手くらい繋げ！」
俺がうっしーの手をAの太ももの上に乗せると、うっしーは飛び跳ねるように驚いた。
「手、手って、こ、ここでしょ！？」
うっしーがAの手を勢いよく握る。
「そーそー」
無意識のうちに手を握っていることに気づいていないんだろう。うっしーは顔を赤くしたまま、「ほんとすみません！まじで、」とAに謝り続けている。
Aもまた、楽しそうに笑っている。
「はい、ちゅー！ちゅー！」
何言ってんだ俺。
さっき、うっしーに言ったばっかりじゃねぇか。
恋愛感情だけは持つなって、
「キヨ！ふざけすぎ」
うっしーが顔を赤くしたまま怒っている。
「チューもできねぇのにカップルに見えるかなぁ」
こんなん言って何になんだよ。
俺、なにしてんの？
「今する必要ないだろ！」
相変わらずうっしーは照れ隠しか、俺の目を見ない。
ほんと。俺って最低。
「俺はできるよ」
「…はぁ！？お前っ」
『キヨさん！？』
うっしーの慌てた顔。
情ねぇな。
「俺なら、できるよ」
「……いやいやおかしくない？」
こんなことして何なんだって、
言い聞かせても止まらない。
「今から変えてもいいんだぜ、俺がAの恋人役になることも」
凍てついたうっしーの顔。
瞳の奥に見える「嘘だろ」って叫び。
はは、最高。
やってやった。言ってやった。
『キヨさん、ガッチさんに仕事割り振られたでしょ』
「でもうっしーより俺の方がうまく振る舞える自信があるね」
そう言うとAは口を閉ざした。
さぁどうする。
うっしー、悪いな。
他人のものに興味を示しちゃう俺を
許してくれとは言わねぇさ。
独占欲だけの恋心に
純情もクソもない。
ただ奪略したいだけ。
そんな俺を、どう叱る？
うっしー
「キヨ……」
うっしーは眼鏡をかけ直すと言葉を紡いだ。
「キヨがそう言うなら。そうなのかもな」
『牛沢さん！？』
「俺はここで待機してる」
うっしーは俯いたままそう言った。
「じゃあ、交渉成立っと」
俺は運転席を飛び降りて、後部座席のドアを開ける。
「行きましょうか」
手を差し伸べると、Aは不安げな顔で俺を見た。
俺は優しくAの手を握り誘導する。
うっしーはそんな俺を1度も見なかった。
ドアは静かに閉じられた。
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作者名：式@江戸村組 | 作成日時：2017年11月20日 1時
