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『死を待つのみ』
輝君のその言葉に、途端に現実を突きつけられたような鈍い痛みが頭を襲う。
「待って......待ってよ輝君。お兄ちゃん!!!私、私まだ貴方に何も......何も返せてっ...」
「何、言ってんだ...よ、A。兄ちゃんはAに......いろんなもん、貰った......ぞ。」
「私......っが、お兄ちゃんに......?」
そんな事ない、そんなはずない......。いつだって私は、お兄ちゃんに着いていくので精一杯で、いっぱい、いっぱい助けて貰って......。
「A、俺の...妹に......生まれてきてくれて......ありがっ」
―ボウッ
「え?」
刹那...兄の身体が炎に包まれる。
何......?一体、何が......
『ピピーッ!!!』
聞き慣れた笛の音の直後。私の身体はグイッと中隊長に引き寄せられる。
「怪我は無いかA!?」
「あ、中隊長。私は大丈夫です。輝君が、足が瓦礫に挟まって......動けなくて、それで......それで...焔ビト......」
「A......。」
ポロポロと溢れてやまない涙をグッと堪えて、今流れ出ているものをグシグシと拭う。
中隊長の腕から抜け出て、彼に振り返る。
「私がやります。下がっていてください。」
中隊長は一瞬逡巡するような顔をしたが、私の目を見て小さく頷くと、数歩後ろに下がる。
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紫癸(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます!そして読んでいただきありがとうございます(嬉)少しでも力になれたのなら何よりです!お互い頑張りましょう!! (2021年4月3日 20時) (レス) id: 577fa76214 (このIDを非表示/違反報告)
やよい - 凄く面白かったです!凄く書く気が出ました ありがとうございます 頑張ってください (2021年4月2日 15時) (レス) id: 90306a3c24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫癸 | 作成日時:2021年2月24日 14時