22 ページ22
「!?......課長!?」
そこに立っていたのは、瞳孔が開いて浅い呼吸の課長だった。
いや、正確に言うと元課長である。あの後、数日の欠勤の後、課長は辞表を提出した。
今は先輩が課長の職を引き継いで、随分とというか、とっても働きやすい職場になった。
「お前のせいだぞA〜...お前のせいで、あの男が毎晩毎晩夢に出てきて、毎晩毎晩俺は飛び起きるんだ...。」
ヒヒッと、声を引っ掛けるように不気味に笑う。
ゆらり、ゆらりと、おぼつかない足取りで私の方へ近づいてくる。
「可愛がってやっていたというのに......。お前だって、満更でもない顔をしていただろぉ?」
ケヒヒッと不気味に笑う。
ああ、完全に壊れてしまっている。
「ふざけないでください。誰が満更でもない顔ですか。生憎私は、貴方のことも、貴方の行いも大嫌いでしたよ。」
「ひっ...ヒヒッ遠慮するなよA〜???」
バッと、懐からむき出しのナイフを取り出す課長。
やはり、武器を持っていた。
私はばっと両手を前に突き出す。
「......っ...なん..だ...」
私に後数歩で辿りつけるといったところで、課長の手からナイフが落ちる。
どさりと地面に倒れ込む課長。全身から脂汗が滲み出ている。
「私が、元特殊消防隊員だということをお忘れですか?」
「な...に..を......?」
喉を抑えて辛そうな課長。ゆっくり近づいて傍にあったナイフを拾い上げる。
「私の能力は、温度調節。体温、炎の温度、物体の温度空気の温度。凡そ温度と呼ばれるものは、私の意のままに動かせます。」
「今のはあなたの周りの気温と、貴方の体温を少しいじらせて頂きました。大丈夫です。軽い脱水症状と熱です。」
「そこで夜風にでも当たっていれば、そのうち治りますよ。多分。」
小さく一礼して、玄関前の小さな門扉に手をかける。
その時...!
「グアアアアァァアアア」
心底苦しそうな唸り声とともに、後ろからぼわっと燃え上がる炎の気配に勢いよく振り返る。
「そんな......なんで...」
「GUAAAAAAAAッッ!!!!」
課長の全身から炎が噴き出し、身体中を覆う。
「....ハッ...ﾊｧ......そんな...私...私の......っっ」
ジリジリと後ろに後退しようと思っては見るが、足が動かない。
「っつ......!!」
遂にはペタンッと尻もちを着いてしまう。
ジリジリと、ゆっくり迫ってくる課長。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫癸(プロフ) - やよいさん» コメントありがとうございます!そして読んでいただきありがとうございます(嬉)少しでも力になれたのなら何よりです！お互い頑張りましょう!! (2021年4月3日 20時) (
レス) id: 577fa76214 (このIDを非表示/違反報告)
やよい - 凄く面白かったです！凄く書く気が出ました ありがとうございます 頑張ってください (2021年4月2日 15時) (レス) id: 90306a3c24 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫癸 | 作成日時：2021年2月24日 14時
