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5. ページ6

「さっきの......」

「うん?」




先程のあの子に対する声色とは打って変わって、優しげな声で尋ねかえす及川。

ああ、イライラする......。




「あんた、ちゃんとフレるんだね。」

「えー何それ?」




国語準備室の扉を開きながら、そういった私に、及川は可笑しそうに笑いながらあとに続く。




「付き合う気がなかったらそりゃあフるでしょ。」

「そうじゃなくて......」




沢山の辞書を棚に戻しながらお互い顔を見ずに会話を進める。




「私が、言ってるのは...『来る者拒まず』とかそういうことじゃなくて......」

「じゃなくて?」

「ちゃんと、突き放せるんだねって......こと...。」




数秒間、私たちを沈黙が包む。




「ごめんAちゃん、ますます意味がわからない。」




棚越しの及川が首をかしげたのが辞書や本の隙間から見えた。




「『部活に集中したい』何て...そんな言い訳よりも私は!私は......。」




言いたいことが沢山あるのに、言ってやりたいことが沢山あるのに、どれも上手く言葉にならない。


俯いていた私の視界に、及川のつま先が入る。直ぐ目の前にいる。




「そんな残酷なフリ方じゃなくて、私は...もっとちゃんとフッて欲しかった......。」




顔を上げた先の及川の顔が、今にも泣き出してしまいそうで、私の瞳が大きく揺らいだ。



何で、そんな顔をするの......?

まるで、傷ついたのが自分だとでも言いたげな......。




「同じ部活だからとか、そういう...体良く断るための優しさとか要らない......。」

「......じゃないよ。」

「え?」




少し手を伸ばせば直ぐに触れられる距離にいるのに、及川の言葉が上手く聞き取れない。




「言い訳でも、優しさでもnっ......」




―キーンコーンカーンコーン




ガバッと私の肩を掴んだ及川。
チャイムの音に二人ともビクリと反応する。


沈黙に包まれるのが耐えきれず、私は及川の手を私の肩から降ろす。




「授業...遅れるから、戻る。」

「あ、うん......。」

「手伝ってくれてありがとう。」




そう告げて、私は国語準備室を後にした。


触れられていた部分が燃えるように熱い。




嫌い......いつまでもあの時に縛られている、下らない自分が、大嫌いだ......。

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設定タグ:及川徹 , ハイキュー , 青葉城西高校   
作品ジャンル:恋愛
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紫癸(プロフ) - RIOさん» 呼んでいただきありがとうございます!全然更新できてなくてすみません...頑張って完結させます!!! (2021年11月8日 21時) (レス) id: 577fa76214 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - 小説読ませてもらってます!めっちゃ面白いです!!更新待ってます! (2021年11月3日 19時) (レス) @page50 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
紫癸(プロフ) - ねこ@自己満小説さん» 読んでいただきありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです!!^^更新頑張ります! (2021年8月8日 14時) (レス) id: 577fa76214 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ@自己満小説(プロフ) - この作品めちゃくちゃ好きです!展開も早くてもうあの、性癖にグサッときましたね!これからも頑張ってください!! (2021年8月7日 12時) (レス) id: d675a829f6 (このIDを非表示/違反報告)
紫癸(プロフ) - さ。、さん» コメントありがとうございます。なるほど……そうですよね、申し訳ございません。物語の構成上まだ名前呼びにはできないので、苗字変更できるように調整します!!貴重なご意見ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 (2020年6月15日 18時) (レス) id: 09e86c6bee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫癸 | 作成日時:2020年6月2日 15時

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