【大丈夫】4 ページ21
「やめて、俺の存在神格化しないで。人間だから。」
ゆづくんも心なしか少し戸惑ってる。
ファンにとってあまりに大きな存在になってしまったら、周りもちょっと生きにくいんだろうな。
「なんか高校生の時とだいぶ違うね。」
自慢の兄とその妹。って感じでけっこう甘えたりしてべったりだったのに。
「いやぁ、これまで色々ありすぎて。もう偽名を使おうかと思ったことも一度や二度じゃないですよー。」
Aさんが冗談ぽく言いながらも、その内容は重い。
大スターの身内というだけでいわれのない誹謗中傷を受けたりしたんだろうか。
珍しい名字だからすぐにバレるし。宮川の5000分の1しかいなさそう。
「やっぱ大変なんだね。羽生結弦の妹って。」
「家族じゃなきゃやってられないです。」
「ちょっと、やめて。Aえぐりすぎだから。」
ゆづくんが自分の心臓を押さえ、何かにやられた素振りを見せる。
でもそんなのお構い無しに、Aさんの語りは続く。
「しかも家ではただのオタク。めちゃめちゃしゃべるし承認欲求すごいしご飯食べるの遅いししかも餃子ばっかり食べてるし。意外と変態ですよ?みんな本当の兄を知らないから。兄もあまり見せないし。自業自得ですよ。かっこつけちゃって。」
「はぁ…。」
なんだろう。あまりにあっけらかんとした物言いで、けなしてる感じが全く伝わってこない。
最後の変態とかのくだりはさすがに…。
「A、Aさん。周りに聞こえる。ね、いい子だからもうやめなさい。」
ゆづくんが恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、腫れ物を触るよう小声で必死にやめさせようとするのだけど、効果はうすい。
「みんなに本当のゆづ兄を知ってもらう良い機会じゃない?」
「それはちょっと…。」
さすがに俺も止めた。
肩書きがオリンピック二連覇だけに、イメージは大切だ。
「ま、普通じゃ出来ない経験をたくさんさせてもらってるんで、楽しいんですけどね。」
最後にそうフォローしたところで、ホームに車両が入ってくるアナウンスが流れ、やっとこの危ないネタが終わる。
でもAさん。面白い。
ひょっとしたらゆづくん、家ではちょっと悪い子なのかなって想像してしまった。
まだまだ僕の知らない羽生結弦がいるんだ。
そんなあたりまえのことに気付かされた。
.
29人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿(プロフ) - らっきさん» 読める心境になってよかったです!気持ちには応えられないけど好きでいていいんだって、羽生さんに言って欲しかったんです。お話の中だけでなくお互いの立場上、様々な困難があるでしょうし。夢もあるし。さてツアー!たまアリに行けますように!!ありがとう! (9月11日 23時) (レス) id: 4f12fa325f (このIDを非表示/違反報告)
らっき(プロフ) - 完結おめでとうございます!やっと読める心境になり、読みに参りました。やはり切ない結末で、でも未来が見える終わりでしたね(*^^*)二人ともお互いが別の形で支えになっていくんだなーと思いました。新しいツアー、チケ取りもまた頑張りましょう。お疲れ様でした! (9月11日 22時) (レス) @page28 id: 4da1a124c4 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - エミルさん» でも書くのをやめると結構暇ですね。最近は宮川界隈でオタクしてますが(*^^*)みやのライブで癒されてます。いつかお会いすることがあったら、ご挨拶させてくださいね! (8月21日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - エミルさん» スケートのシーン。夢小説には必要ないのかもしれないど、こだわりたかった。スケートで何かを伝えたり、心を重ねてみたりするのが好きなので。 (8月21日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - エミルさん» スケートとは、ファンとは、プライベートとは…。想像ですけど、こうであったらいいなと思いながら書きました。普通の生活が難しい人なので、実際お相手の方はなかなか大変だろうなと、ちょっと同情したりして(笑)友達以上恋人未満、くらいがちょうどいい気もします^^ (8月21日 17時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鹿 | 作成日時:2023年8月8日 23時