嘘と真実5

【12月28日】3 ページ8

「すみません、こちらのわがままで。」

Aが俺に変わって頭を下げてくれた。
元はといえば1にこだわった俺のわがまま。
…さらに恐縮する。

「あ、書けました。」

記入した書類を山本さんに渡す。

「はい、確認しますね。不備があると元旦に受理出来ないので…。」

じっと目を通して、はい、大丈夫です。とお墨付きをもらった。
提出するだけだから、もうこれで終わりなのかな。

「えと、こんな感じでよかったです？」

どうしたらいいのかわからないので、俺から声をかける。

「はい。これで終了になります。本日はお疲れ様でした。日にちはまだ先ですが、おめでとうございます。」

「「ありがとうございます。」」

ほっとした〜。
無事に提出できた。

「…所で羽生君。大変申し訳ないのですが、こちらにサインを頂けますか。」

まだ何か残っていたかな、と思ったら…机の下から色紙が出てきた。
…その数、約10枚。

「あ、あぁ。いいですよ(笑)」

「プライベートに申し訳ない！家族がファンなので(笑)」

山本さんが照れながら色紙を差し出してきた。
そういうことか。
ま、仕方ない。
こっちも無理言ってるし。

マジックでさらさらっと書く。

「慣れたもんだね。私もサインもらおうかな。」

「何そのつまんねー冗談。欲しくないくせに(笑)」

そういえばAにサインを求められたことないな。
本当に昔から俺に興味なかったんだ、ちくしょう(笑)

「奥様ならいつでもご本人に…。」

「「奥様？！」」

俺とAがハモった！

「ちょ、くくく(笑)」

「なに笑ってるの？！失礼な！」

「だって、奥様だよ？！Aが奥様って…(笑)」

あー！お腹がイタイ…(笑)

「…結弦。手が止まってるよ、ほら。」

「自分でもおかしかったくせに、なに冷静になってんだよ(笑)」

「…うるさい、早く書いたら？」

慣れてないから恥ずかしいんだろ。
奥様なんて言われて。

「はいはい。書きますよ、奥様(笑)」

舌打ちの音がした気がしたけど、まぁいいや。
さっさと書いちゃお。

10枚全部書き終えて、山本さんに渡す。

「はい、どうぞ。いつも応援ありがとうございます、とお伝えください。」

「すみません！助かります！…あと、写真だけいいですか？」

携帯を取り出す山本さん。
サインの次は写真か、もうなんでもありだな。

「私が撮りますよ。」

撮影者をかってでたA。
たぶん自分が写りたくないからだな。
俺もその方が良いと思う。

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