嘘と真実5

【おまけ】3※R ページ35

普段聞くことがないAの声。
かわいくて、大人っぽくて。

それを、全部ちゃんと覚えておこうと、正気を保ちながら自分をコントロールする。

「す、ストップ…、一回ストップ…。」

俺の太ももに手を当てて、中断を要求してきたのでそれに従った。
ゆっくり、したかったし。

「ん。」

Aから出て、後ろから抱きしめる形でベットに横になる。
はぁはぁと、息を整えながら俺の腕に手を乗せて。

「…相変わらずきれいな、身体だね。結弦は。」

Aの方が何倍もきれいなのに？
てか、それ男に言うセリフかって。

「Aにしか見せてない…。」

後ろから耳や肩にキスしながら、まだ終わりじゃないと感覚で伝える。

「離れたくないな…。」

俺もだ…でも明日からはお互い、一人寒い夜を過ごすんだよ。

「他に言いたいことは…？」

「…泣きそう。」

もう泣いちゃいな。

「もっと…わけ分かんなくなればいい。」

そしたら素直に泣けるよ。

そのまま後ろから入ったら、より一層高い声がAから発せられた。

バカだの、やめろだの、好きだの、やめないでだの…。
言葉の選択がめちゃくちゃだ。

けど、最後は俺からの好き。でおとなしくなった。

Aの目から涙が流れていて。
舌でそれを舐めとった。

そこから俺は、無我夢中でAの身体を蹂躙する。
このまま子どもでも出来れば一緒にいれるのに…なんて、一瞬最低なことを考えて。

でもやっぱり。
Aには好きなことをして欲しい。
ぐちゃぐちゃの頭の中で、細い糸のような冷静さを、必死で捕まえようとしていた。



…



ザァザァと激しく音がする。

「よく降るね。」

窓の外を見ながら、今日飛行機飛ぶかな、とAが言う。

「さすがに飛ばないなんてことはないだろ。」

雨は午前中に止むって言ってたし。

朝。仙台の冬は寒いけど、この部屋はあったかい。

夢だったオリンピック。でもこの一週間だって充分夢みたいだった。
今度いつこんな風に過ごせる日が来るか…。

「来シーズンは、もっと長い間離ればなれかぁ〜。」

「Aが自分で決めたんでしょ。海外行くって。」

「うん…。」

わかってる。
人生をもっと先まで見据えて、目先のことだけにとらわれない生き方が、一番素晴らしいんだってこと。

長い人生。
やりたいことがたくさんある。

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