嘘と真実5

【1月1日】1 ページ24

時計の針が午前０時を指すまで、あと3、2、1…。

「「あけましておめでとう！」」

テレビのカウントダウンを見ながら、ソファーに座って年を越した。

2018年の幕開け。

ということは、この瞬間。
俺とAが正真正銘、家族になったということだ。

「羽生Aだよ？どうする(笑)」

ニヤニヤしながら彼女を肘でつつく。

「実感なさすぎて…。紙に名前書いただけだもん(笑)」

とにかく時間がなかったので、まだ指輪も用意できてない。

この一週間。
俺は怒涛のような忙しさを経験した。

関係者各位への報告。
まだ発表したくなかったので、連盟と所属先のごくごく一部の人に、トップシークレット扱いにしてもらっている。

一番気を使うのは、役所。
婚姻届をあらかじめ提出しておいて、一月一日に受理してもらうのだが、外部には絶対にもらさないようにお願いした。

その前に両親の了解を得て…。
まだ早いって反対されたけど、俺がどうしても今日籍を入れたいと、なんとか説得して。

「一応、平昌終わるまで正式に発表はしないから。気づかれることもないと思うけど、まぁ気を付けて。」

「うん。」

「あー新居落ち着く(笑)」

ソファーに座ったまま背伸びする。

「新しくない(笑)」

文句を言うA。
ずっと住んでたもんね。

「来季が終わるまで我慢してよ？現役中は時間ないし。」

Aも春から海外でしょ。
とりあえず今はこのままで。

「結弦、来週にはトロントへ行くんでしょ？」

「うん。あ、一緒くる？」

「今ばれないように気を付けろっていったじゃない(笑)」

そうだった。

「てか、なんもできねーのな。この状態じゃ。」

世間に内緒にしている限りは。

「後２ヶ月、いつも通りこそこそ頑張ろ(笑)」

「なんか、前とあんま変わってない…。」

「気持ちの問題！はい、シャキッとして！」

パシッと背中をたたかれる。

「痛！もう…やめろよ。」

ケラケラ笑ってる。
なんか尻に敷かれているみたいじゃんか。

そういえば…あんなに野球選手と結婚したがっていたAだけど、よく俺との結婚を決断したよな。

野球の話題すら、あまり出さなくなった。
あんなに好きだったのに。

「ね、大谷選手と俺、どっち好き？(笑)」

「そりゃ大谷選手！！…痛！」

クッションで殴ってやった。

「それ今日籍入れた相手に言う？！引くわ！」

「う、嘘です…羽生結弦選手が好きです…。」

隣で頭を押さえながら言うA。遅いから。

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