輝く水平線5

【平常心平常心】4　★ ページ46

★羽生サイド

あっぶね。踏み込みすぎた。
やり過ぎたかな。大胆すぎる行動に自分でも引くほどだ。

でも会うのが久しぶり過ぎて、ちょっとでも近くでAさんの存在を感じたかったのだ。
そんな男心、微塵もわかってないだろうけど。

スケーター同士じゃないからハグとか絶対無理だし？
ま、しばらく自制しよ。

「それよかさ、これから行くお店って個室？」

「あ、はい。実はお店のマスターに羽生さんが来ることを伝えたんです。」

「そうなの？」

「馴染みのお店だから、プライバシーはバッチリなのでご安心を。羽生さんのために上質の赤身をセレクトするって張り切ってました。」

「へぇ。嬉しい。」

赤身なら普通に食べられる。
今めちゃくちゃお腹がすいてるから、霜降りとかだと逆に受け付けなかったかも。

でもさすが航空会社のお嬢さまだな。
今回は自分でお店を選ばなくて正解だった。バックボーンが違いすぎる。

「とっても貴重な部位も用意してくれてるみたいです。」

「そっか。量より質って感じかな。」

「ですね。」

ありがたい。こういう所、Aさんは全部わかってくれるから助かる。

「でもそれAさん的に足りるの？」

「たっ！足りますよぉ…。気心の知れたお店だから、ちゃんとわかってくれてます。」

てことは、Aさん用に適量出てくるんだ。
ふふふ、楽しみ。

「だよね、いっぱい食べて。」

俺の前では好きなだけ食べればいい。
でも指摘されて照れてるのか、むくれるAさんがかわいい。

ご飯に行く前のAさんって、わくわく感が伝わってきて一番かわいい気がする。

普段友達とご飯に行くことなんてないから、こうやって好きな人と一緒に、ちょっとずつ世間に慣れてる自分に新鮮さを感じてしまった。





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